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聖獣

突然の乱入者に動けなくなるヤーシャ族達

皆が白の一角を見て指示を待つ。

『御頭!』


「作戦変更だ、隙きを見て散れ! お前は俺の後ろにいろ!」


白の一角は動揺を隠しきれていないが

それでも、的確に指示を出す。


フタツ面の森の聖獣は

タムトタムトの血の匂いに興奮していて

ダラダラと涎を垂らしながら唸り声をあげる。


「御頭! オレが隙きを作ります!」

最初に動いた、赤い一本角のヤーシャ族

聖獣の足をめがけ力一杯槍を突いた。


槍先は直撃したが、

ガツーン!と弾かれ、槍が圧し折れた。


槍の折れた反動でバランスを崩す赤い一本角。

聖獣には傷一つ付いていない。


先制攻撃を受けた聖獣は

怒り狂い、赤の一本角目掛け飛び掛かる。


『!!』


あまりのスピードに誰も声さえも上げる事が出来ない。

あわやそれまでかと皆が思った。

しかし、その瞬間

ビュンと風を切るように銀色が飛んで行き

聖獣の瞼を掠めた。


「ギャアア!」


聖獣の瞼からは鮮血。

白の一角のナイフが聖獣の視覚を奪った。


「くそっ! 直撃はしなかったか!」


瞼を斬られた聖獣は出鱈目な動きて暴れ回る。


『今のうちに逃げるぞ!』


ヤーシャ族達と京美は各々バラバラになって走り出した。


後ろから迫る聖獣の唸り声と足音

振り返らず道なき道を全力で走り抜ける。

退路には転がる大きな石、生い茂る草

そして木の根が網目のように這っている。


京美はヤーシャ族に遅れを取らないよう走るが

木の根に足を引っ掛け転倒してしまった。

 「やってしまった…!」

蹲りながら顔を上げる京美。


ヤーシャ族達の背中が離れてゆく。


後ろからは獣の呼気。

恐怖が薄れ諦めの気持ちになる京美。


「こりゃダメだね…」

俯き覚悟する。


その時

「何してんだお前!」

ガシッと掴まれ大きな肩に担ぎ上げられる。

戻って来たデカイヤーシャ族は

京美を担いだまま走り出す。


担がれたまま、顔を上げると

聖獣の爪がこちらに迫るのが見えた。


「危ない!」


叫ぶ京美。

ビッ!!と音と共に痛みが腰にはしる。

ゴロリとデカイヤーシャ族と京美は転がる。


ヤーシャ族の肩には巨大な爪痕

京美の腰にはズボンが破れ少しの痛み


倒れたままのヤーシャ族に走り寄る。

「ちょっと! あんた大丈夫!?」


「うぐぐ…」

命はある。しかし肩からは大量の出血。


グルルッ…!回り込んだ聖獣はトドメを刺そうと唸り声をあげる


京美はヤーシャ族を庇うように立ち上がる。


「別に死んでもいいと思ってるんだよ私は」

ジリジリと聖獣に近づく。


すると、不思議な事が起こった。


牙を剥き出しにしていた

聖獣はフンフンと鼻を鳴らし、

京美の腰辺りの匂いを嗅ぎだした。


そしてグルグルと甘える様な仕草をしだした。


「何……?」

自分の腰を見るとポケットに入れていたコンビニ袋が破れ

”マルのマタタビおやつ”が溢れていた。

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