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二つ目の頼み事(モーゼス)

 モーゼスの店の中に入ると、熱した鉄の熱さで作業場だけでなく宝飾品や武器等のある店舗の方まで室温が上がっていた。奥の部屋からは鉄を叩く音が続いている。


「相変わらず宝飾品に似つかわしくない、現場って感じの暑さだね……焦げ臭いし!」


「暑すぎる! ゆっくり商品を見てられないですね……こんなに素敵な物が沢山あるのに……本当に勿体無いです!」


「そもそも、商売する気が無いのでは!?」


京美達はモーゼスの店についてあれこれと愚痴っていた。

その声のボリュームは知らない間に大きくなっていた様で、モーゼスは鉄を叩くのを止めて此方に様子を伺いに来た。


「何か店舗の方が騒がしいと思ったら、お前達か……今日はどうしたんだ?」


「実は今度の祭用にまた追加で制作をお願いしたい事があって……」


クィッ!!

モーゼスの片眉の角度が上がった。

只今の眉毛角度30度。


「……あのタコ焼き器では何か足りない部分があったのか?」


「あー、あれとは別の物を作ってもらいたくて……と言うか作り方を私達に教えてほしいのよ」


ククイッ!!

眉毛角度45度に上昇。


「何だと? 詳しく言ってみろ」

モーゼスは決して短気では無い。

しかし、職人気質な為、どうしても喋り方がぶっきらぼうになってしまう。


「うわぁ……無償で教えて下さい……とか言えないですね……モーゼスさんの威圧感強過ぎですよ!」


「村田ちゃん、()()言ってるのと同じだから……」


「そうですか? じゃあ序に全部に言っちゃいますね! 実は……楽器の作リ方を教えてもらいたいんです。出来れば無償で……!」


「何!?」


モーゼスの眉毛の角度は90度近くまで上がりきって、そのまま吹っ飛んで顔から無くなってしまうのではないかと京美は思った。

しかし、かろうじてモーゼスの顔にしがみついていた眉毛は時間が経つと少しづつ元の角度にゆっくりと戻り始めた。


(スケールの針みたい……)


「楽器なら、俺でなくても専門の店があるだろう?」


「普通の楽器ならモーゼスさんに頼んだりしないよ、特殊な楽器を作りたいから頼んでるんだよ」


「……まあ、話は聞いてやる」


「流石モーゼスさん! 助かるよ!」


「まだ、受けるとは言ってないぞ……」


「じゃあ、早速聞いて頂戴! 実はね……これをこうして……」


「うむ……うむ……」


──こうして、京美達はモーゼスに特殊な楽器制作を依頼した。大風の日には果たしてどの様なフラッシュモブが行われるのだろうか?


「……って、感じにしたい訳よ」


「なるほどな……確かに普通の楽器ではその計画は不可能だな……俺でなくては請け負えない仕事だ」

モーゼスは目を閉じ深く頷いている。


「だから、頼んでるんだよー! お願いっ!!」

京美はモーゼスに向かって、手を合わせ拝み出した。

それを見ていた仲間達は揃ってその行為を真似ている。


「……おい、俺は神様じゃないんだぞ……仕方ねぇな……やってやるよ……もう頭を上げろ。俺を拝むな」


「恩に着るよ! ありがとうモーゼスさん!」


「流石ミャラッカ国一番のの職人さんです!」


「いつも、助けられているな……」


モーゼスは頭振(かぶりふ)って「お前ら、もうやめろ照れくさい」と恥ずかしそうに言った。


「ナイスイケおじ!! ヒューヒュー!!」


モーゼスの眉毛が再度上がり始め「ナイス……イケ……おじ……??」と呆然とした表情で呟いた。

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