手の中の答えは
京美の手の平に転がる謎の小さな物体。ソレを食い入る様に仲間たちは見つめている。本人にしか判別の付かないソレは一体何をイメージして作成したものなのか?
「見てわからない? ほら白くてフワフワの物だよ?」
『いや、まったくわかりません……』
「あーもうっ! もどかしいねぇ……。答えは『羽』だよ! ねっ!? 答えを知ったらナルホドーって腑に落ちたでしょう?」
京美は蜜で出来た自称『羽』をより高く頭上に掲げた。
『…………。』
皆、京美に掲げられている『羽』を魂の抜けたマネキンの様な視線で見つめている。
「ちょっとちょっと……あんた達。なんか反応してよ……不安になるじゃない……」
─ややあって、京美の信頼する仲間達は騒ぎ始めた。
『えええっーーー!?』
「嘘でしょ!? ありえないんですけど!?」
「羽に見えましたか? アレもしかしたらあっちの世界ではアレが『羽』なのかもしれないですけど……」
「京美は冗談を言っているんじゃないか? 笑ってやったほうがいいんじゃないか?」
「キョーミは目があまり良くないから……仕方ない。可哀想なんだよ」
なんなのこの人達は……!
やたらと大きい声で失礼な発言の連発。誰かが何か言う度に私は心はダメージを負っているんですけど?
揃いも揃って人の気持ちがわからないKYなの?
本当にムカつくわ〜……。
こうなったら今出た発言、全てに答えてやる!
「まず嘘ではありません、アダムの飛び散る羽からインスピレーションを得ました。次にあちらの世界でも羽の形は一緒です。そして冗談でもありませんいたって本気です! えーと……確かに老眼で実際に視力は良くありませんが目の近くに持って行って作ったので見えないという事はありません、大丈夫なんです!! ゼェハァ……ゼェハァ……」
息が上がった京美の背中をヨシヨシとアリナが擦る。
「あー、私が不器用なのはよーくわかったので……お話はこの辺にして、皆で『羽』の飴を作ってもらっても良いですか?」
京美の思い描いたスィーツ。
それはネジリの実から作る羽の形の飴細工。
そのアイデアは天族のサーカスから得たものだった。
漸く京美の意図が皆に伝わった。
狭い作業場ではあるがみんな真剣な顔をして指先でコネコネと一心不乱に『羽の飴細工』を作っている。
果たして誰が一番上手に作れるのか?




