黄金の目
リー……
虫の鳴き声は止まる。
ドンドンドン!!!
その音にカバッ!と起きる京美、続けてアリナも目を擦りながら起きる。
隣の部屋からティムが木の棒を手に持ち、走ってやって来た。
「京美さん! アリナ!」
「何なの!?一体?」
「何者かに家を囲まれてるみたいです」
京美はベッドから降り壁板の節目から外を覗いてみる。
10人は居るだろうか?
確かに人影に囲まれている。
ドンドンドン!扉を叩く音。
そして「出て来いや!!」聞き覚えのある怒声。
ティムが棒を片手に構えドアに向かう。
「待ってティム、私が行く」
これはあっちの世界でもある”お礼参り”ってやつだね。
そう瞬時に理解した京美。
テーブル上に置いた標本の角を頭に装着する。
「京美さん……」
「顔見知りの声だからさ、私行くわ」
アリナは京美に行かせないように腕を引っ張る。
京美はアリナの頭を撫でながら
「大丈夫だから」と言ってニッと笑った。
扉を開ける京美、周りを見渡す。
やはり日中に見たヤーシャ族が居た。
京美を見ると奴は指差し、「この女です! 御頭」
他のヤーシャ族よりも一周りは小さな男に報告した。
(真ん中の小さい奴が親分か……)京美は冷静に観察した。
その直後、ガンッという音がしてデカイ例のヤーシャ族が転がった。
デカイヤーシャ族は殴られた事にビックリして
「お、御頭?」と顔を上げる。
「女じゃねーか、女相手に俺に縋ったのかお前…」
低く冷たい声。
「は、スミマセン! 白の一角と名乗ったので、御頭の血縁かと…
あ、女の頭を見てください! 白の一角です。」
フードを深く被った男の目は金色、鈍く光る。
京美の頭上を見つめる男。
パシッ!
そして京美の角を払った。
『角が取れた!』
ザワザワするヤーシャ族達。
「バーカ、よく見ろ偽物の角だ
確かに…俺の血縁に成りすましてるふてぇ女みたいだな……」
チラリと京美に目をやり男は続ける。
「それにお前の着てるその皮……気になるな」
ヒョウ柄のトップスを見る男。
「おい」と男は顎でヤーシャ族に指示を出す。
2体のヤーシャ族が京美の腕を掴み引っ張った。
京美は攫われまいと抵抗するが
力で敵うはずもなく、引き摺られる。
「「京美さん! キョーミ! 連れて行かないで!」」
棒を振りかざしたティムとアリナが家から出てくる。
ヤーシャ族はそれを片手で簡単に抑える。
「こいつらどうします? 御頭」
「適当にその辺に縛っとけ」
「へい」
京美は綱で縛られ大柄のヤーシャ族の肩に担がれた。
ゆさゆさとヤーシャ族の歩行に合わせて視界が揺れる
家の方を見ると畑の柵に縛られている二人が見える。
(あそこなら、村の人達にすぐに見つけてもらえるだろう…)
京美はホッとしたと同時に
これから自分は一体どうなるのだろうと恐怖した。




