お料理教室
扉を開けるとティムの「おかえりなさい」が聞こえてきた。
ティムは包帯を取っている最中。
ミイラ男から脱皮し美白美少年になっていた。
「凄いですね! お金を取り戻したんですね!」
食材をテーブルに置きながら
京美はフフンと自慢げに鼻を鳴らした。
「いーや、お金は使ってないよ」
「え?どういう事です?」
ティムは驚いて目を見開く。
「ティム、肉屋がヤーシャ族って知ってて私に角を付けさせたんじゃないの?」
「いえ! アリナのボディーガード代わりになると思って
京美さん頑丈そうだし……そうなんですか肉屋ヤーシャ族だったんですね」
「頑丈そう?」
ガシッとティムにヘッドロックをかます京美。
「わー!」
「乱暴なヤーシャ族を追い払ったから、お礼で色々貰ったんだよ!」
「わー! まさに今、ここにも乱暴なヤーシャ族がいます!」
「なんだってー?」グッと力を入れる京美。
その横では焼き菓子を食べ終わり食材を並べるアリナの姿
テーブル上に食材を大きい順に並べている。
京美と料理をするのを待ちきれない様子。
「何作ろうかねー」
ヘッドロックしたまま、食材のチェックをする京美。
四角いカボチャ、虹色の卵、ギザギザした星型のお芋。
よし決めた!
手を洗い、料理道具を準備する。
鍋でしょ。まな板。調味料。
「ティム、包丁どこ?」
ハッとするティム。
「京美さんに刃物なんて……何に使うおつもりですか?」
「料理に決まってるでしょ!」
ヘッドロックを再度かましている京美に
アリナが包丁を取り出し見せてくれた。
黒光りし波模様が刃にある綺麗な包丁。
「何これ、凄い良い逸品じゃない!?」ヘッドロックを外す。
「ゴホ……はい、それはミャラッカ国一の鍛冶屋の打った物なんですよ」
「この世界にもそんな職人がいるんだねぇ」
まな板の上に四角いカボチャを乗せ、細かくしていく。
トントンと簡単にカットできる。
「これはすごい切れ味だわ」
隣のアリナは卵を割っている。
何個か割ったところで殻がボールに入ってしまったのか
口先を尖らせ、指先で殻をそっと摘んでいる。
ティムは星形の芋を井戸の水で洗って帰ってきた。
「洗い終わりましたー」
「次に芋の皮むいてティム」
三人の楽しい料理の時間は終わり
ドキドキワクワク食事の時間。
テーブルに着きフォークとスプーンを持ち
待ちわびているティムとアリナ
「お待たせー!まずはこれ」
トン!とテーブルに置かれた木製の深皿
四角いカボチャは程よくカットされホクホク
そして甘じょっぱく味付けされている。
【四角カボチャの煮付け】
「そしてお次はー」
トン! 平たい白い皿には出汁で味つけされただし巻き卵。
卵がフワフワと巻かれ柔らかいのが良くわかる。
【虹色だし巻き卵】
「それでお次はこれ」
大皿にザッと盛り付けられた、薄くスライスし油で揚げ塩を一振り
【星形ポテトチップス】
二人は目を輝かせている。
「この様な料理が京美さんの手から作られるなんて、
まさしく奇跡ですね!」
コクコクと頷くアリナ。
『いただきまーす!』
三人は至福の時を過した。
───その夜────
ティムは自分の部屋で就寝
アリナと京美は狭いベッドで身を寄せスウスウと寝ている。
リー…リー…
外では虫の声
その音に混じり
ガサガサ…ガサガサ…という何者かの足音が家に近づいていた。




