屋敷に戻ろう
京美達はサミュエルとの一件を終わらせた後、
晩餐会の為に用意されていた料理をバンガ城の人々と一緒に楽しんだ。その時に王と話す機会があった。
まず、大風の日に行われる予定のフタツ面でのサーカスの事を伝えた。
バンガ王は大層、喜んでいて「その日が楽しみだ、ミャラッカ王に宜しく」と二つ返事で答えてくれた。
そして、眠り病に患った経緯も話してくれた。
─王とシロウの父で狩りに行った日、二人は鉱山で見慣れない格好をしている村田と出会った。
好奇心旺盛な王と村田は意気投合し、そのまま一緒に狩りに行く事になった。
しかし、村田は装備を持っていなかった。王は自分の着用していた狩り用のマスクを村田に貸す事にした。
途中で採掘人とすれ違う三人。村田はこの世界に飛ばされた時に自分の近くにあった小さな山の”赤い石”の情報を採掘人に教えた。採掘人と三人は別れ反対の方向に歩きだす。
そして、その直後大きな地震が起きた。
その地震で三人の周りに砂煙が漂い、マスクをしていなかった王はその場で糸の切れた人形のように倒れ、目覚めなくなった。
恐らく、採掘人が死の石のくっついた大きな亀をツルハシで刺激した事で亀は動き。死の石の欠片が辺り一帯に舞ったのだろう。
近くで発掘調査をしていたティムの落盤事故も亀が動いた事で起きたに違いない。
バンガの従者達は次から次へとお酒の瓶や料理を持って京美達に振る舞う。その度に「ごめんなさい」「誤解していた」と謝罪の言葉を添えてくる。
「いいんだよ私は気にしてないよ!」
(そもそもヤーシャ族が城を追い出された時に私は居なかったし……!)
─そんな賑やかな晩餐会の後、京美達は自分達の屋敷に戻って来ていた。
「わぁ! レトロな雰囲気ありますね!素敵」
村田は初めて訪れる石造りの屋敷の雰囲気にえらく感動してパシャパシャと携帯で写真を撮っている。
携帯を壊された村田の落ち込み具合が余りにも酷かったので、京美は自分の携帯をプレゼントする事にしたのだ。
そして村田の隣にはアリナが居る。と言うより強引に居させられている。アリナが「仲間」だと種明かしをして紹介した時「カワイイ!カワイイ!」とやたらと気にいって、今もアリナの腕を引っ張り離さない。
(埴輪もカワイイ、アリナもカワイイって……村田ちゃんのカワイイの定義が広すぎる)
「元々デイビーズさんっていう収集家のお屋敷だったんだよ、中には村田ちゃんが好きそうな妖しい骨董品が沢山あるよ」
「へえー!? 早く中に行きたいです」
腕をグイグイ引っ張られるアリナ。バランスを崩して転びそうになっているが、それでもニコニコと笑っている。
ヤーシャ族達は城に戻れる様になったにも関わらず、石造りの屋敷に戻って来た。
「ねぇ、シロウ。折角『城に戻らないのか?』って言ってくれてたのにこっちに来ちゃっていいの?」
バンガ城にはシロウの父親を一人置き、他のヤーシャ族達はゾロゾロとシロウの後にくっついてこの屋敷まで戻ってきた。
「ヤーシャ族の誇りを取り戻せた……それで充分だ。それに俺はここが好きなんだ」
「デカはさ、侍女が居ないのにこっちで良かったの?」
京美はデカをからかうつもりでそんな事を言ってみたが、デカは真剣に考えて答えを出した。
「アリナちゃんが遠くなっちゃうからこっちに決まってるでしょ!」
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7月の試験後には再開しますのでどうぞ宜しくお願いします。m(_ _)m