サミュエルとの対決④
「いい加減にするんだサミュエル……!」
その声はバンガ王だった。
シロウの父親に支えられながらホールに姿を現した。
長い間、眠ったままだったので自分の足の筋力は弱りスムーズには動けない。
『王だ! 王が目覚められた!』
『良かった国は元に戻るのね………? そうだわ……ヤーシャ族達は間違ってなかったのよ……私達、悪い事をしたわ……』
サミュエルは感情を抑えられない様子で喚き散らし始めた。
「何故王が現れる? この箱の中に居たのでは無いのか……!? もしや、これを破壊したから魔術から解放されたのか?」
始末した筈の王の登場でパニックになったサミュエルは押さえつけていたオスカーの手から足を上げてオロオロとする。
京美は呆れたように溜息をついて種明かしをする。
「あのね最初からずーっとここに居たんだよ、携帯の光に釣られて周りが見えなくなってたんだ……王様は自分の目でアンタがどんな振る舞いをするのか確かめたいって言っててさ……慈悲ってヤツだったんだよ」
バンガ王は悲しそうな顔をする。
「どうしてもお前がそんな真似をするとは信じたくなくてな、一連の流れを自分の目で確かめてみたくなった。無理を言ってここまで連れて来て貰ったのだ……残念だ……サミュエルよ……」
衛兵達は王から直接命令が下った訳ではないが、槍を構えサミュエルを取り囲んだ。
近くに居たオスカーが先頭に立つ。
「大人しく武器を捨てて下さい、サミュエル殿」
サミュエルは俯き一点を見つめたまま動かない。そのサミュエルの様子にその場に居る殆どの者が観念したのだろうと思った。
「さぁ、剣を渡してください」
オスカーは武器を預かろうとサミュエルの持つ小剣に手を伸ばす。
しかし、サミュエルの手に持つ小剣は強く握られ小刻みに震えているのをシロウは見逃さなかった。
「離れろ! オスカー!!」
「!?」
一瞬、京美はそこに悪魔が現れたのかと思った。
それは顔を上げ激昂したサミュエルの真っ赤な顔面、吊り上がった鋭い目と歯を食いしばるその表情が悪魔そのものに見えた。
オスカーの胴体目掛け突き出される小剣。なんとか避けようと上体を反らす、しかし間に合いそうもない!
剣先が胴に当たる寸前、足元に転がっていた自分の兜に偶然足を取られた事によってオスカーは後方に倒れ込みサミュエルの剣をなんとか躱すことが出来た!
「許さんぞ馬鹿にしおってぇ!!」
なんとか助かったオスカーだったが更にサミュエルの追撃は続く、倒れ込んだオスカーに止めを刺すのは容易。
突き立てるように小剣を振り上げた。
思わず京美は目を閉じる、村田も右腕にしがみついてきてどうする事も出来ない。
ギィン!
金属のぶつかり合う音。
それはシロウがサミュエルの剣を払う音だった。




