3.リリ、パーティを募集する
それから一週間。
簡単に見つかると思われたパーティ探しは難航していた。
ギルド経由でパーティメンバーを募集している人たちにコンタクトをとるんだけど、ことごとく断られてしまうのだ。
下手すると、会う以前、ギルド経由で掲示板の主にパーティを組みたいって伝えてもらうところで話が終わってしまう。
わたしの心は折れそうだった。
一応、私もパーティメンバー募集の掲示をしているけれど、声がかかることは皆無。
「なんでなのー!」
ギルドで叫んでいたら、笑いながら休暇最終日のヤっさんが見かねて教えてくれた。
「そりゃ、おまえ、リリ、知らないのか?」
「なにがです…?」
「お前の二つ名」
「え! もう! わたしにあるの!?」
喜んだのもつかぬ間、わたしは絶望に落とされる。
「『爆弾娘』」
「え!?」
聞き間違いかと思って、じっとヤっさんの顔を見つめたけど、ヤっさんは笑って首を振った。
「冗談とかじゃなくてだな、ほら、前、どっかの屋敷の害虫駆除にいってたろ」
「あー……」
庭木に大きなワイルドビーの巣ができていて、その駆除に行った時のことが思い出される。
「うん、やらかしてたかも」
考えなしに、その巣に《火炎撃》を撃ち込んで大騒ぎになった事件があったのだ。
「それと、下水管爆破事件」
「そーれーはー」
思い出したくない、地下ネズミに囲まれてパニックを起こして、これまた《火炎撃》で大爆破。
あの時は師匠を呼んで下水管を直してもらったのだ。
「そんでまぁ、わかるよな」
「はい……」
つまり自業自得だ。
「けどまぁ、ほら、あれだ。
ダンジョンに入らなくても、地道にやってれば、ランクはあげられるし、な」
「それ、どんだけ時間がかかるんですかぁ……」
ダンジョンの依頼をこなした方が圧倒的に効率がいいだけで、一応ヤっさんがいうように、ダンジョンに入らなくてもランクはあげられる。
王都の周りの森に魔獣はいるし、それらの素材回収依頼もないことはない。
けれど、王都内、王都周辺の依頼は数が少ないのに、ランクアップ試験を受けるまでに数を沢山こなさないといけないから、ランクアップ試験が受けられるまでに時間がとてもかかるのだ。
師匠からの聞きかじりだけれど、この国はダンジョンが生み出した素材と、それをとってくる冒険者たちの稼ぎで成り立っているのだそうだ。
中級から上のダンジョンは、ダンジョンに出る魔獣の素材だけじゃなくて、鉱石や食料なんかも安定して取れる。
そうして得た素材をを輸出したり、国内で消費して国が回っているから、冒険者にはそれらを安定して供給することが求められている。
だからこそ、この国の冒険者は、ダンジョンに潜ることを求められるのだ。
ヤっさんも、商会と契約して、そういう素材を集中的に回収する冒険者だって教えてもらった。
「まー、一年、専念すればあがるんじゃないか?
それとも、師匠にギブアップ宣言する? 今度の休みについてってもいいぜ」
「うーん、もうちょっと頑張ってみます」
わたしだって、同年代の仲間が欲しいもん。
師匠とわたしの両親も一緒にパーティを組んでたって聞いているし、憧れはあるんだ。
そうは言ったものの、それから一か月。
成果は全然あがらなかった。
ほとんどのパーティには声をかけてしまったから、こちらから声をかけるのは諦めて、パーティ募集の掲示だけ出している。
今はそうして声がかかるのを待っている時間に、森に出て、依頼をこなしていた。
この国で一番栄えている王都のはずで、新人さんだってたくさんいるはずなのに、全然声がかからない。
わたしの二つ名そんなに有名になっちゃってるんだろうか。
そんなある日。
わたしはとうとうそんな現状を打破するとんでもない発見をしてしまった。