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2.リリ、ギルドへ行く

 ギルドは、王都の中にある。

 王都の中に入るためには、入場料を払って外門をくぐる必要があるのだけれど、冒険者は銅貨一枚と格安のお値段だ。


 このサンストナ国は、冒険者が立ち上げた冒険者のための国だから、冒険者が集まりやすい仕組みがあるのだ。

 具体的なお値段は知らないけれど、他の職業の人はもっと高いのだと師匠から教えてもらった。


 外門から中に入ると、さらに高い壁が二枚見えている。

 これまで王都の人口が増えるとともに拡げられてきて、その前の壁が残っているそうだ。


 ちなみに、次の壁の中は、地位がそんなに高くない貴族とか、お金持ちが住んでいる区画。

 一番奥の壁の中は、今は王侯貴族の住居になっているそうだ。

 ここからだと見えないけれど、王様が住んでいるお城もあるんだって。


 けれど、用事もないし、敷居が高すぎて壁の内側になんて入ったことはない。

 わたしが普段利用しているのは外から入ってすぐのエリアだけ。

 宿屋や武器屋、道具屋にギルドなどの職人街、露天などが雑多に集まっていて、一般の人も住んでいるのだ。



 賑わいの中、器用に人を避けて進む師匠の後を遅れないようについていく。


 あ、猫人族の魚屋さん、今日いいお魚が入ってる。

 あっちの野菜屋さんは今日は青菜が安いのか。

 帰りに時間があれば買っていってもいいかもしれない。


 なんて、通りに並んでいる商品に目を取られてる間にも師匠は先を進んでいて、露天を広げているトカゲ族の古道具屋さんに「そこのべっぴんさん、寄ってかないかい」なんて声をかけられている。

 それを師匠は「また今度ね」と軽く流していた。

 この国は人種で出入りを制限していないから、犬人族、猫人族、兎人族など、色んな種類の人たちを見かける。


 そうして人波をかわしながらギルドについた。

 師匠は納品カウンターへと向かい、それが終わるまで別行動だ。

 はりきってギルド内を見回すと、ギルドの中は閑散としていた。


 しまった。

 今はみんな、依頼を受けて出かけている時間帯だった。

 午前中の早い時間か、もっと遅い、依頼が終わってみんなが戻ってくるような時間に来ないといけなかった。


 ガーン、とショックを受けていると、受付カウンターで話をしていた人が、話が終わったのかこっちにやってくる。


「ヤっさん!」

「リリじゃねーか」


 ヤっさんは茶髪で二十歳後半くらいの人族の男性だ。

 胸当てだけ金属で、他の部位は革でできている軽鎧をいつも身に着けていて、普段は商会専属で中級者向けのダンジョンに潜っている人だ。

 師匠の知り合いみたいで、わたしが困っていると、色々と教えてくれるいい人だ。


「こんな時間に珍しいな」

「ヤっさんこそ!」

「俺はこの間からしばらく潜りっぱなしだったから、しばらく休暇を貰ったんだよ」

「ほんと!?」


 これは、ヤっさんに頼めばいい流れじゃない?


「リリの方こそどうしたんだ」

「岩山のダンジョンに一緒に潜ってくれる人を探しに来たの」

「なるほどな」

「ね、ヤっさん」

「なに」

「一緒にダンジョン着いてきてくれない?

 あそこなら、きっと一日でクリアできると思うし! 

 そんなに時間はかけないから! お願い!」

「師匠についてってもらえばいいんじゃねーの?」

「師匠と一緒だと、こう、わたしがクリアしたってみんな思ってくれないと思うの」

「あー……って待て、俺はいいのか?」

「うーん、師匠よりはいいかなって」

「うっわーひっでー」


 言いながらも、ヤっさんは笑っている。


「ならさ、一応師匠に聞いてみな」

「師匠に?」

「おう。師匠がいいっていうんなら、いいぜ。

 あ、今日は来てるのか。

 なら、ほら、待ってるから聞いてきてみなって。

 俺はあっちで依頼見てるから」


 ヤっさんは、そういうと、依頼が張り出されている掲示板のところへと歩いて行った。

 師匠の方を見ると、ちょうど、納品代を受け取っているところだった。

 お話が終わったところで、師匠に近づく。


「師匠! 一緒に来てくれる人、見つかりました!」

「早かったね」

「ヤっさんが、師匠の許可があれば着いてきてくれるそうです!」

「なるほどねぇ」


 そういって、師匠はちらりとヤっさんのほうをみた。

 ヤっさんはひらひらとわたしたちに手を振ってみせる。

 師匠はうーん、という顔をした後、わたしに向き直った。


「まー、ヤスナを頼るのは悪くないかもしれないけど、リリ、それは今回はあんまりよくないよ」

「よくない、ですか?」

「一応ね、星なしが二名以上じゃないと入れない理由もあるんだよ。

 ダンジョンに入れるようになったばかりの年齢っていうのは、つまり、みんな駆け出しだ。

 それに岩山のダンジョンはそう難しいダンジョンじゃない。

 比較的危険が少ないところで、同じくらいの実力の人間とパーティを組むことで、パーティでの立ち回りだったりを覚えてもらう意図もあるんだよ。

 これが中級者向けのダンジョンとかだとまた話は違うんだけどねぇ」

「てことは」

「どーしても、パーティが見つからなかった時の最終手段で、ヤスナにたのみなさい」

「うー、わかりましたー!」


 しょんぼりとしてヤっさんのところにもどると、ヤっさんも肩をすくめた。


「まー、がんばんな。ほら、パーティ募集の掲示とかあるし、な」

「ありがとー! うん、がんばる!」

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