03
ずっと放置してしまいましたが、ようやく投稿できました。
トンネルから出た瞬間、僕等の視界に映ったのは、目的地の旧天神駅。周りは草に覆われて、駅のあちこちには苔が生えている。もう少し歩けば海に辿り着く位置だから潮の香りも微かにした。
そして、その駅にあるベンチに腰掛けている、着物姿の女の子が1人いた。
「お、おい、真守。あれってまさか?」
「も、もしかして」
幽霊?列車じゃないけど、女の子の幽霊なのか?
僕と利明はまるで金縛りにでもあったかのように身体が動かなくなってしまう。
「通りゃんせ 通りゃんせ
ここはどこの 細道じゃ
天神さまの 細道じゃ
ちっと通して 下しゃんせ
御用のないもの 通しゃせぬ
この子の七つの お祝いに
お札を納めに まいります
・・・あれ?」
歌を口ずさんでいる小学生くらいの女の子が、僕等に気付いてこっちに目をやった。
女の子はこっちに目を向けたまま立ち上がる。
「お兄ちゃん達、そんなところで何してるの?」
女の子は不思議そうに首を傾げた。思ったより普通そうだった。
でも、僕等はビックリし過ぎて、その場から1歩も動けないどころか返事もろくにできない。
「ねえ、お兄ちゃん達、どうしたの?ボーッとして」
女の子は駅のホームから線路の上へと飛び降りると僕等の方に向かって歩いてきた。
「お兄ちゃん達、ここは用も無い人が入って来ちゃいけないんだよ」
腰に両手を当ててまるで叱るような口調で言う少女。
「・・・そ、それを言うなら、君はどうなるんだよ」
女の子は海の方を指差す。その先には古い民家が1軒立っていた。
「私の家はすぐそこなの。ここはいつも誰も来ないから私だけの遊び場だったのに」
「え?あぁ、ごめんね」
とりあえず謝ってしまった。
「俺達、夜遅くにここへ来るっていう幽霊列車を見に来たんだよ」
「プッ!お兄ちゃん達、あんな噂話信じてるの!?おっかしいの~!あはははははッ!」
「悪かったなぁ」
小学生に馬鹿にされたと思い、利明は露骨に不満そうにし、そっぽを向いてしまう。
その様に僕は思わず笑っちゃいそうになったんだけど、ここで笑うと利明は余計に機嫌を損ねかねないので話を逸らしておこう。
「じゃあ君は幽霊列車を見た事は無いのかい?」
「うん。無いよ」
きっぱりと言われてしまった。近所の子が無いと言うのなら間違いないだろう。これで利明も帰る気になってくれるはずだ。
そんな淡い期待をする中、利明が口を開いた。
「でも、君だって四六時中ここにいるわけじゃないんだよね」
「え?う、うん。そうだけど」
「じゃあ、君が見てない間に来てるのかもしれないぞ。というわけでしばらく様子を見させてほしいんだけど、ダメかな?」
「・・・いいよ。でも、1つ約束してほしい事があるんだ」
少し悩む素振りを見せたけど、女の子は許してくれた。でも約束って一体何だろう?
女の子が口を開こうとしたその時。
さっき僕等が通ってきたトンネルの方から、砂利を踏み締めてこっちに近付いてくる足音が聞こえていた。
「な、何!?」
僕と利明はトンネルの方に顔を向ける。暗闇に覆われたトンネルの奥から白く光る物体が見えた。