9話:現代
■――戻ろう――
暗闇のなか、三笠は思った。
(私、なにも伝えられなかった…)
来る時に経験した、あの妙な浮遊感の中、三笠はグイグイと光に向かって引っ張られていく。
「伝えなきゃ…」
ポツリと、自分に言い聞かせるように言って決意する。
(私は、連花に伝えないといけない)
徐々に光が大きくなっていく。出来るだけ早く出ようともがいてみる。
速さは変わることがなかったが、少しだけ。
もやもやとした心を紛らわすことが出来たように感じた。
「え?」
光の先から、三笠自身の声が聞こえた。
もちろん今の三笠は声を出していない。
光の先には、三笠がのけぞった状態で静止していた。。
(これって、デジャブ?)
どこかで見たことが、あるような光景に首をかしげ思いだしていたが、
「おお!」
と手をたたき、
(そっか。あれはやっぱり私だったんだ)
そして、三笠は、ゆっくり、のけぞっている三笠の手をつかんだ。
「ふぇ?」
三笠は、一気に穴へ引き込みながら、自分は外へと自分の時代へと出た。
「頑張って・・・」
と、声をかけて。
「聞こえたかな?」
首を傾げながら、消えてしまった穴が、あった所を見つめる。
(ありがとう、連花。私に伝えてくれて。)
「よしっ!」
三笠は気合を入れて、門に手をかけた。
今までとは違う決意を、心に刻みながら。
彼女は知ったのだ、彼女の運命を、未来を。
三笠の思考はぐるぐると回りながら、伝えられた現実を確かに受け止めていた。