5話:事実
■――事実――
「俺は、お前が知ってる。須藤 連花だよ」
「え?」
三笠にはその言葉は、理解しがたかった。
感覚で、そのことを肯定している自分がいる。
しかし、頭がそれに追いつかなかった。
「そ・・・」
だから、こんな言葉しかいえなかった。
「そんなわけ、ないじゃないですか。連花は私と同い年ですから」
「おっ・・・おい。ここまで、ためて、それかよ」
気の抜けたように言う三笠に、連花と名乗る男は、
「かなり、緊張してたんだけどなぁ」とぼやきながら、苦笑いを浮かべた。
彼は仕方ないというように、ため息をつき、三笠に背を向けた
「少し、歩きながら話そう」
そういって、歩き出す男の後を、追うか迷っていた三笠だったが、
そのあとをゆっくりとついていった。
頭に、よぎる彼の顔を思い浮かべながら。
彼は、歩きながら色々と、三笠について話していた。
好きな食べ物や嫌いな食べ物、他にも色々と、その全てが合っていた。
のんきな三笠も、
(これが、うわさのストーカー、なのかも)
と思いはじめた時、彼はこう告げた。
「俺は、中3の夏。お前と海に行った」
「っ・・・」
そのことは、まだ三笠と連花しか知らないはずのことだった。
さっきから、頭をよぎる連花の顔。
あらまで分かっていても、心が「これは、連花だ」と告げている。
似すぎていた。
「もしかして・・・」
あまりにも、似すぎていて、
「連花なの?」
信じるしかなかった。
その、フワフワと宙に投げた言葉を彼はしっかりと受け取り。
「初めに、言っただろ」
と、連花にそっくりな笑顔で笑った。