3話:穴
■――穴――
(連花との、海。楽しみだなぁ)
三笠はとても上機嫌だった。
(久しぶりに、連花とも話せたし)
時々、校門前で待っているという、健気なところもあったのだが、
全くうまく行っていなかった。
三笠は自分の家の門の前で、大きく伸びをした。
「よしっ」
と、気合をいれて、門に手をかけた。
その時、急に足にかかる体重が無くなった。
「えっ?」
違う、足元に大きな黒い穴が開いていた。
彼女は、後ろに倒れるように、足元の黒い穴に落ちていく。
(これ・・・やばいよね)
門にかけていた手に力を入れて、体はのけぞる様な体勢になって止まった。
穴のふちに、引っかかっている片足で、何とか踏みとどまってる状態だ。
(危ないなぁ。こんな、所に穴なんて。掘っちゃだめでしょ)
と、穴はどう見ても、人工的に掘ったものじゃないことが、分かるはずなのだが。
そんなのんきな事を考えていた。
「どうしよう。この後・・・」
今の三笠の体勢は、筋力的にとてもつらいのであった。
そして、さらに状況を悪化させるものが現れた。
穴から出てきた手が、三笠の手をつかんだのだ。
「ふぇ?」
間抜けな声がした。その手は、三笠を強く穴へ引き込み、その反動で穴から出てきたのだ。
「私?」
その、穴に引き込んだ手の正体を、視界の端で目撃した。
その言葉を最後に、三笠は深い深い穴へと、落ちていった。