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6話 スキルと私

お付き合い頂きありがとうございます。

初ブクマ頂きました!嬉しいです!

頑張って少しずつ更新して行こうと思います。

ユウは長い間茫然と寝転がっていた。


自分に与えられた新しいジョブは決して簡単には受け入れられるものではなかったが、ここがどんな世界で、自分がここ新しく生を受けた理由は何か。自分の目で見て、行動するまでは何もわからない。


そんな思いがユウを突き動かした。




「いつまでも寝てるわけにもいかないな。とりあえず落ち着けるところを探そう。」




時計が無いので具体的な時間は分からないが、日が落ちるまでにはまだまだ時間がありそうだ。


起きて辺りを見回す。見たところ、平和そうな草原が広がっている。



時折、鳥の鳴き声などは聞こえるが、イメージしていた魔物や猛獣の類は今のところいなさそうだ。




ユウの背中側にはそこそこ高そうな山が広がっており、その反対側は森林地帯となっている。

ユウは少しの間悩んだが、手ぶらでわざわざ山登りをすることも無いだろうと、森林の方へ進んでいった。



──────────



初めから所持していた装備や服のおかげか、草原や森を散策するには何の問題もなかった。

また、盗賊というジョブの補正も相まって、初めての場所にも関わらず、まるで一度通ったかのように進むことができた。


森林は見通しが悪く、どういった敵に出会うか分からない。そう考えたユウはもう一度自分のスキルを確認する。




スキル:投擲(C)、探索(C)、逃げ足(D)




「戦闘で使えそうなのって、投擲ぐらいか?いざとなったら逃げ足ってのも使えそうだけど…」



こうなれば、実戦で試してみたいところだ。

ユウは生来の優柔不断な性格かつ、極度の心配性である。


日常では常に最悪の事態を想定して動いている。それはあのリセマラの数が物語っていた。結果としては決められないまま終わってしまったが。



とにかく、強敵が襲ってきた時にスキルの使い方が分からないようでは、目も当てられない。


まずは投擲のスキルを試そうと、近くに落ちている手頃な石や木の枝を拾い集める。



森の中で拓けた場所があったので、木に印を付けて様々な距離から投げてみる。


結果はとても地味なものだった。



「確かに、狙った場所には自然と投げられる気がするが…。これだけ?」


何度も試していくうちに、手に馴染んできたからか、結構な距離からでも目標に当たるようになってきた。


距離の限界はあるようだが、狙った場所に正確に投げるというスキルで間違いないようだ。




そして、想定外のことが、1つ起こった。


ユウとしては軽く投げたつもりであったが、手のひらサイズの石ころが今までの速度とは明らかに違う速度で飛んでいった。


急激な上昇や下降もせず、ただ真っすぐに光を帯びて突き進み、風を斬るような音をして的に命中した。

木の幹が揺れ、木の葉が舞い落ちる。




「す、すげえ!なんだ今の?」




そして、そのクリティカルヒットした石ころは、目を輝かせて驚いていたユウの手元にいつの間にか戻っていた。


「うおお!!地味だけど結構威力ありそうじゃん!」


完全なる偶然だったが、これがスキル投擲の真価であった。


投擲するアイテムの重さや形に対応した投擲方、対象への軌道やタイミングなどが全てが噛み合った時、クリティカルヒットとなり、数倍のダメージを与え、更にアイテムも消費しないというもの。



それなりの威力があるが、多数の敵を一撃で蹴散らすような高ランクのスキルには見劣りするし、何より動いている対象にヒットさせるには相当な修練が必要なものであったので、お手軽な他のスキルの方が人気があるのも事実であった。



しかし、盗賊というジョブのユニークスキルと組み合わされば、その難易度をかなり下げることもできるのだが、ユウはまだそこには気付いていない。




「力加減や角度が重要って感じだな。クリティカルのこの感覚、すげー楽しい!」



その後もユウははじめてボール遊びを覚えた子どものように、何度もその地で投擲を繰り返した。


適性があったのか、めきめきと上達し、動かない物に対しては数回に1度はクリティカルヒットが出せるようになった。




そしてよからぬ事も起こる。森の中で音を立てて目立つことをしていると、否が応でもにもそれを狙うものが現れる。


先ほどユウの頭の片隅にもあった、モンスターだ。


幸いにも最下級のゴブリンであったが、一心不乱に練習しているユウはそれに気付いておらず、ましては初心者丸出しの状態であったので、いかに知能の低いゴブリンといえど、こいつはカモ、と思えるものであった。


全身を覆う濃緑の肌に、身を隠すだけのボロ巾、手にしたのは棍棒の類だろうか?身長はやや小柄で5〜6歳の子ども並のその魔物は虎視眈々とユウの隙を狙っていた。


と言っても、隙だらけなのだが。


ゴブリンは確実に獲物を仕留める為、仲間を呼んだのか、3体の徒党を組んでいた。


知能が低く、体も小さいゴブリンにとっては集団戦術が常套手段である。3体というのは幸か不幸かその中でも最小の単位であった。


次の投擲が終わった時、動くぞ。ゴブリン達は目で合図をしてユウの動向を観察していた。



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