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第32話 契約と私

4年ぶりに再開しましたが、なんと新規ブクマ増えてきました!ありがとうございます!

「はぁ〜…助かったぁ〜!」


レッドボアに襲われていた子供は、安心したのか座り込む。



「こんなところに一人で来たのか?えっと…君は」


「スイラだよ。うちの店で頼まれてきたんだ。そちらのおねーさんも、ありがとね。」


「私はシズクだよ。いくら頼まれたとはいえ、女の子が一人で来る場所じゃないと思うけど。」


「…!!ボクは男だよ!」


「あら、そうなの?私はてっきり…」




山吹色のローブに身を包んだ少年は少し不機嫌そうに頬を膨らませてシズクを見た。


「シータの村、物資や食糧が足りてないらしくて、商売しにきたんだ。なんか強力なモンスターが出て、物流も滞ってるらしいよ。」


「…にしてもこんな山を一人で来るのは危険だろ…。」


「しょーがないよ。ボクが発注で大ミスしたから、その仕置きなんだよ。」


「そんなに厳しい店なの?子供一人で来させるなんて、何かあったらどうするのよ。」


「まぁ、ボク一人居なくなっても別に良いんだろうね…。でも、シータで利益が出せれば、発注の大ミスはチャラって話だよ。」


「それはそうかも知らないけど…。人の命をなんだと思ってるんだ。お前も嫌なら逃げ出せば良かったのに。」


「逃げ出したい気持ちはあるよ。でも、ボクにはあそこしか居場所がないからなぁ…。」



そういうと少年は山吹色のキャスケット帽を深く被り直して、俯いた。

これ以上踏み込むことは彼の心をえぐるようでユウは少し辛かった。しかし、沸いた怒りの矛先を向ける宛てもなかった。


「何か俺たちに出来ることはないか?俺たちもシータの村に用事があるんだ。」


「ちょっと、ユウ!」



シズクがユウの袖を引っ張って木陰に隠れた。

スイラはその様子に少し微笑んだ。


小声でスイラに聞こえないようにユウを諭す。


「あんたは他の子に構ってる余裕ないでしょうが。」


「シズクさん…分かってるんですけど、なんか放っておかなくて。」


「それはそれ。自分の用件が終わってからにするべきでしょ?」


「でも、今あの子を見殺しにすると、後味が悪いです。」


「まぁ、それはそうだけど…。じゃあ村に着くまでが条件よ。それ以降は邪蛇の討伐に専念する。分かった?」


「はい、わかりました!ありがとうございます。」


ユウは深々とシズクに頭を下げて、スイラの元へ戻った。

シズクは膝を抱えてうずくまっていたが、ユウに声を掛けられて顔を上げた。

上目遣いで笑い掛けるその姿は、シズクが女の子と間違えるのも無理はない、潤いのある美少年のそれだった。


「シータまで一緒に行かないか?他に何か必要なことがあれば手伝うよ。」


「いやいや…護衛なんかいらないよ。報酬も出せないしさ。」


「どうせ同じ目的地に行くんなら一緒じゃないか。シータまでの道は分かるのか?」


「あそこなら、昔少し住んでたことがあるから分かるよ。」


「じゃあスイラは道案内、俺たちはモンスターが出れば応戦するってことでいいな?」


「んー…魔物用の魔術の道具も少なくなってきたし、それなら…。」


スイラはどこか気乗りしないようだったが、ユウは道案内と人助けを同時に得ることができ、満足していた。


そして三者は、村についてからはお互いに干渉無し、という条件で協力関係が結ばれた。

もっとも、お互いにろくに素性も知らない者同士であったので、その方が気が楽だった。


そして、腰を上げて山道を再度進み始めた。



──────────


日が沈みかけた頃、ちょうど良い野営地を見付けて野営の準備をしている際に、スイラが意を決したようにユウに話しかけてきた。



「あの、良ければもう一つ頼みたいことがあるんだけど、良いかな?」


「何だ?」


「もし、食糧が余ってたらしたら分けて欲しいんだ。もちろん、タダってわけじゃないよ。」


「食糧か…俺達も余裕があるわけじゃないからちょっと厳しいかな。」


二人の会話にシズクが首を出して問いかける。


「さっきのレッドボアの肉は?ドロップしてたでしょ?」


「さすがに生肉は駄目じゃないですか?量もそんなに無いし。」


「ま、()()ならね。」


シズクがユウの方をチラリと見てわざとらしくウインクした。

その深い意味がわからずにユウは訝しんだ。


「手に入ったら、でいいよ。旅人から食糧をせがむのも酷な話だしね。」


「あぁ、分かった──」



そんな会話の最中、辺りを照らすような閃光と共に、けたたましい咆哮と地響きが三人の耳をつんざいた。


「な、なに?」


シズクが辺りを警戒する。

ユウも背中をシズクに預けて、辺りを見回す。


そして、繰り返す地響きがこちらに向かってきている気がして、スイラは青ざめた。

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