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24話 聖剣と私

聖剣による攻撃は的確に守護者(ガーディアン)にダメージを与えていた。


攻撃を仕掛けようとしたその隙を突いたのか効果的だったのか、その不安定な体をよろめかせた。




「グオ………アイタタ……」



守護者(ガーディアン)から低い、地響きのような声が出た。

よろめきながらも、体勢を整えようとする守護者(ガーディアン)に対して、扉の開錠を諦めたシズクが渾身の一撃を試みる。



突進したシズクは砂煙を舞い上げながら、肩から突撃し、左の掌をその一つ目に添えた。

スローモーションのように右手を大きく回し、その手で左の手首を強く握る。



「肆の形!!【厄神】ッ!!!!!」




その掌から放出した闘気が黄色いドーム状となり、直後、轟音と衝撃波が守護者(ガーディアン)を襲う。



再度よろめき、体勢を崩す守護者(ガーディアン)

その一つ目が弱点ということを、先程のユウの攻撃でシズクは直感的に感じ取っていた。




「アイタタ………アイタタ……」




痛みを訴えている守護者(ガーディアン)を知ってか知らずか、その隙を狙って再度ユウが畳み掛ける。



「行けぇぇぇぇ!!」



聖剣を縦と横に薙ぎ払うことで、縦横無尽に鶴が舞い踊る。

その衝撃波と青白い光はまるで花火のようであった。



守護者(ガーディアン)が戦力を削がれたのか、一つ目の赤い光を失い、ついに顔から地面に崩れ落ちた。




「やったのか?!」



ユウが聖剣を携えたまま向き直るところへ、シズクが合流する。



「う、動かなくなったわよ!」



シズクと共にその動向を観察するユウ。

やがて、守護者(ガーディアン)はパラパラとその形を失い、元の天井の壁へと戻っていった。



大広間は先ほどの激戦など何事もなかったかのように閑散としている。

辺りを探りながら、とりあえずの危機が去ったことに安堵し、気付くと二人はハイタッチしていた。


ユウが手にした聖剣は敵する者が去ったことで、先ほどの青白い光は失われ、まるで眠りについたようであった。



ふと、壁画を見ると先ほどの一つ目の守護者(ガーディアン)の隣に文字が添えられていた。




──覚悟を見せた者へ、その剣で希望を開け──



ユウはその一文を見て、先ほどの守護者(ガーディアン)は悪しき魔物の類ではなく、聖剣の護り手であったことを理解した。




守護者(ガーディアン)が先ほどまでいた地面に落ちている砂の塊を確かめながら、シズクは安堵の表情を見せる。


「あー…怖かった!!!逃げられないし、本当どうなるかと思ったわよ!」


「正直、大分危なかったですね…!シズクさんのおかげです。」


「いや、絶対その剣のおかげだって……で、ユウ。その剣はどうするの?」


「せっかく手に入れたものですが、使いこなせるかどうかは…シズクさんはどうですか?」


「私は適性無いから無理。ユウの方がよっぽど資質ありそうだけど?」




売却すれば一生遊んで暮らせる、というのは魅惑的だったが、初めて手にした強力な武器を手放すというのも勿体ない気がした。

ユウは次の武器が手に入るまでは所持しておくことにする。



「他に宝物は無さそうですね。せっかくついて来てもらったのに申し訳ない。」


「いやいや、良いんだって!面白い経験できたし、十分!」


「ありがとうございます。」


「でさ、その代わりといってはなんだけど………」




シズクはユウに一つの願い事をした。

ユウは帰途につく最中、その願いを簡単に聞き入れたことを後悔していた。




──────────



鹿の子亭についた二人は、疲れを癒しながら食事をとっていた。

ギルドのこと、戦闘のこと、そして不思議な遺跡のこと。

ユウにとっての初めてのパーティ行動であり、その戦果と言えるものを話し合うことは斬新で、生死を共にした経験を語り合うことに胸を躍らせた。




シズクは何度も操刻のコンパスについて聞いてきたが、入手経路や詳しいことは説明しても理解してもらえなさそうなので適当にはぐらかしておいた。



戦闘についての話や戦術については、戦闘職としてのシズクの意見や経験はユウにとって参考になった。

基本的にシズクのスタンドプレーであり、ユウは補助に回っていたが、盗賊という戦闘特化の職業でない者にとっては自分では到達できない境地であり、チーム戦術としては相棒の特徴や考え方を知ることは何よりもの戦力強化に繋がる。

先程手に入れた聖剣を上手く扱えれば、その戦力は何倍にもなるであろう。




現実世界で過ごした睦月先輩と似た顔や性格を除けば、最高のパートナーとなっていたかも知れない。



「しかし…今日の飯もまた旨い…」


今日のメインディッシュはチキンステーキのような物だったが、付け合わせの小魚の佃煮にユウは箸が止まらなかった。

住んでいた日本を思い出す、その小皿の一品にユウは懐かしさを覚えた。



「安定の美味ひさよね…ほれよりもさ、あんた約束覚へてふの?」



白飯を頬張りながら、シズクは尋ねる。

遺跡を出る時、剣を譲る代わりに取り付けた約束である。



「覚えてますよ。でも、俺とパーティなんか組んでも、損するんじゃないですか?」


「どうひてよ?」


「ギルドであんな扱いを受けたのに、誰も好き好んで盗賊なんかとパーティ組みたくないと思うんですけどね…」


「ギルドのことはギルドのことでしょ。逆にそれであんたのこと放っておけなくなったのよ。」


「俺なんかと組まなくても、シズクさん程の武術家なら、もっと上を目指せそうなのになぁ…」




ユウは決して、シズクと行動を共にすることを拒否しているわけではないのだが、自分という存在が相手の足枷になることを嫌った。



「私は意外と相性悪くないと思ったわよ。私ってさ、戦闘になると前しか見えないところがあるの。前のパーティでもそれで突っ走って、連携取れなくってさ。でも、あんたにはその広い視野がある。鷹の目って言うんだっけ?盗賊のユニークスキルに頼らなくても、あんたには状況をきちんと見抜き、整理する能力がある。私に欠けてるのはそういう部分なの。」



シズクはユウの目を見て続けた。美女にここまで言われることに慣れていないユウは思わず顔を赤らめたが、悪い気はしなかった。


感性で物を考えるシズクの言うことには妙な説得力があった。相手のことを分析する能力は完全にシズクに分があった。



「そこまで言ってくださるんなら…逆にこちらからお願いさせてください。シズクさん、俺とパーティを組んでください。」


「オッケー。じゃあこれからはお互いの背中を預けるパートナーよ。」




シズクは口角を上げて笑い、握り拳を差し出した。それにユウは同じく握り拳で応えた。


色々なことが重なって、更新が大分遅くなりました。

一度小説を畳もうかと思ったのですが、休んでいる間に評価やブクマをくださった方々のおかげで何とか思いとどまりました。

今後ともよろしくお願いします。

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