閑話 管理者の憂鬱
手に取っていただき、ありがとうございます。
本編とは少し違う、番外編的なお話ですが、
物語の核心のお話です。
「ふぅ…次から次へと仕事ってのはあるもんだね。」
管理者、と呼ばれているその人物が大きな椅子に腰を下ろす。
その椅子は高級なようで、姿勢を深く倒してもすっぽりと包み込むような余裕があった。
薄暗い部屋で資料に目を通しながら、一服する。
時田 優。彼は上手くやっているだろうか。
あれほど優柔不断な人物は見たことがない。
彼の真っ直ぐで不器用な性格をその管理者は見抜いていた。
管理者が優の担当になったのは、完全に偶然であった。
優自身が希望したわけではないが、彼がこの管理者の管理する世界へやってきたのは理由がある。
その理由は管理者の手に持つ資料の中にあった。
「そもそも、この世界で何をするか、すら言ってなかったっけな…?」
管理者は大事なことを思い出したように首を傾げた。しかし、彼にとってそれはどうでも良い事だった。優がユウとして新しい世界で生きていくことに意味があるのだ。
それ以外のことはきっと、なるようになる。そういう風にこの世界を作ったのだ。
部屋をノックする音がして、頼んでおいた飲み物と軽食が届いた。
管理者といえど、食事は必要である。
届けてくれた秘書のような人物に、無理はいけませんよ、と小言をさされた。
「私が無理しなくては、誰が無理をするんだ?」
管理者は不敵な笑みを浮かべ、目を細めながらこう呟いた。
他の管理者ともうまくはやっているが、自分の信じられる絶対の協力者は自分以外に考えられなかった。
自分をコピー出来るような能力でもあれば、それは叶えられたが、管理者にまだそれを行う術をもたなかった。
小休憩を終え、再度その職務に着く。
黒い文字盤のようなものを小気味良く叩く。
1つの仕事を終えると、また別の仕事が舞いくる。
ローテーションのように、そのサイクルが回っている。
1つ1つが簡単な仕事ではないが、その荷の重さに彼自身は愉しさをも感じる程、管理者としての生活は充実していた。
これが人々の希望になってゆくのなら、と。
「しかし、彼は本当に王道らしい道を選ぶね。その道に刺激を与えるにも、【盗賊】という職業を与えたのは正解だったかもしれない。」
管理者は息を大きく吸い込み、満足気にため息をついた。
最後までお読みいただきありがとうございました。




