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19話 再会と私

「ユウもここに泊まってたの?」



と親しげに語りかけるシズク。

日中の露出の多い装備とは違い、室内着であったが、見覚えのあるその顔にユウは苦笑しながら答えた。


「え、えぇ。昨日からですが。」


「昨日の夕食時には見なかったけどね〜。ここ、料理美味しいでしょ?」


「昨日は疲れて寝てしまいました。なので朝ご飯しかまだ食べてませんが、絶品でした。」



相槌を打つが、会話のペースは次第にシズクに巻き込まれた。



「そうよね!やっぱり料理が良い宿に泊まるのが鉄板だよね。」


「はい。あ、支度ができたみたいですよ。」



食堂の配膳場所のあたりで、小さな体のアカリが体を大きく伸ばしてベルを振っている。

どうやらここは自分で食事を取りに行くスタイルのようだ。


シズクの後を追って料理を受け取りに行くユウ。

追加料金を払う際に受け取った札を手渡し、通常よりも高級そうな大盛りの料理を受け取る。



「あんた、新人の割には羽振りがいいわね。私より良い物食べてるじゃない…。」



シズクの詮索を笑って誤魔化し、料理に目をやる。

メインディッシュは同じ、揚げた肉にデミグラスソースを掛け、それをライスに乗せたものである。見た感じ、通常メニューのシズクのそれよりも1.5倍ほどの量がある。

付け合わせには薄黄緑色の野菜が添えてあり、さらに他種の野菜を煮込んだスープ付きだ。

一人暮らしの際に慣れ親しんだ丼物のような一品に、ユウは思わず唾を飲み込む。



「美味すぎる…カツとご飯の組み合わせはやっぱり最強だ。茹でただけの添え野菜も、素材の良さを引き立たせている…。」


「でしょでしょ?チグノーの名物料理らしいよ。今日泊まっててラッキーだったね。」


「このスープも素朴な感じで、濃い料理にちょうど良い味付け…完璧すぎる。」


ユウは食べる度に舌鼓を打っていた。戦闘や探索で腹が減ったユウにはこのボリュームのある食事は何より満たされた。

実年齢より若く転生しているので食欲も最盛期のそれに戻っていたのかもしれない。


「ところでユウは今日どうしてたの?あの後ずっと店回りってわけじゃないでしょ?」


「あぁ、今日は森に行ってました。」


「ソロで行ってたの?」


「そうです。まだここに来てすぐなので、誰とも組んでなくて。結構強い魔物もいて大変でした。」


「変ね〜。あの森、昼の間はそんなに強い魔物が現れなかったはずだけど。」


「いやー、まだ新人なんで、どの魔物も怖いですけどね。」



食事をしながら、談笑をするユウとシズク。

人と接するのはあまり得意でないユウも、心細いこの世界で話し相手がいるのはありがたかった。

それにこの世界を知る良い情報収集の手段にもなる。


「特にあのカマキリみたいな奴が手強かったです。」


「カマキリ?もしかして絶死の蟷螂(キラーマンティス)のこと?」


「多分そうです。一撃でやられそうになりましたよ。実際左腕怪我しましたし。何とか討伐しましたけど。」


「ソロで討伐したの?!森ではかなり危険な魔物なのに。あんた見かけによらずやるわね…!」


「ギリギリでしたけどね。」


「見たところまだ低ランクっぽいけど…。何か良い装備でももってるの?」


「残念ながら、ゴブリンから手に入れたナイフと、森で拾ったナイフしか持ってません。投擲でなんとか、って感じです。」


「えぇ?!その貧弱そうな投げナイフであの魔物倒したってこと?」


「結果的には、そうですね。」


「末恐ろしいわね…。あんた暗殺者(アサシン)にでもなるつもりなの…?」


「いやそんなつもりは…。ところでこの世界の職業、よく分かってないんですが、詳しく聞きたいです。」



そんな基本的なことも知らないことにシズクは驚いたが、この世界の職業について食事をしながらユウに語ってくれた。


この世界では生まれた時から人それぞれ適性というものをもっており、それが成熟と共にスキルとして習得できるらしい。

基本的にその適性は変わることはないが、鍛錬の末に習得したり、何かのきっかけで目覚めることはあるという。

その適性の組み合わせから選ばれるのが職業だそうで、これも先天的にほぼ決まっているというものであった。


また、鍛錬や評価により上の職業にランクアップできるらしく、そのランクは最高ランクのSランクからDランクのものまである。



ユウは前述の通り、最下級のDランクであったが、盗賊からは宝探しの道、探索者と、先ほどもシズクから聞いた暗殺者(アサシン)へのランクアップの道が拓いているそうで、ユウは消去法的に探索者を目指そうと心に決めたのであった。

ユウの性格上、盗賊というだけでも不似合いなのに、危険を伴いそうな職業は避けたいという気持ちからである。

願わくば、平和にアイテム探索と操刻でほのぼのと暮らしたい。



一方でシズクは格闘家系の職業でCランクの武術家という職業だそうだ。

他の職業も目指せる適性があったらしいのだが、諸事情でその道は選ばず、自分で格闘家の道を切り拓くつもりらしい。




「まさか盗賊だったとはね…。意外だったわ。」


「うーん、自分で選んだわけじゃないので、良く分からなくて。」


「まぁでもあの魔物を投げナイフで倒すなら相当な適性があるのかも。暗殺者(アサシン)を選ばないのが勿体無いぐらいよ。」



この世界でも盗賊というのはやはり、荒くれ者やならず者の選ぶ職業らしい。

その響きやイメージから、盗賊そのものを毛嫌いする連中も多いようだった。


ユウの頭にリーナの顔が浮かぶ。そりゃ、普通の考えなら盗賊よりももう少しマシな職業選ぶよな…とユウは顔をしかめた。




「そういえば、森でこんな鍵と気になる手記を見つけたのですが、シズクさん森の遺跡とか知ってます?」


「ん?あの森でそんなの聞いたことないよ?」



説明するユウに興味深く聞き入るシズク。

ユウは時折シズクの顔が近付くことが気になったが、森で見た光景とその手記の内容を伝えた。




「なにそれ、ちょー面白そうじゃない!」


「誰かの悪戯かも知れませんけど、この鍵を見てると、本当にあるのかなって思って。」


「じゃあ今度行ってみようよ!」


「え、シズクさんも来るんですか?パーティの都合とかあるんじゃ?」


「そのパーティにこないだ放り出されてね。いや、自分に責任があるんだけど…。まぁ暇してるから一緒に行こう!」


こうなると、ユウには断る理由がないので、承諾するしか無かった。

睦月先輩と似た、このシズクと共に旅をするとは、思ってもない事態であったが、ユウよりランクの高いシズクは戦力としても、この世界の案内人としても申し分の無い誘いである。

二人は食堂を後にして、後日準備を整えてから出発すると約束したのであった。




豪勢な食事をしたおかげで腹がいっぱいになり、その疲れから急激に眠気が襲ってくる。

ユウはベッドに着くと、すぐに眠りに落ちた。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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