15話 質屋と私
手に取っていただき、ありがとうございます。
少しの間、お付き合いいただけると嬉しいです。
飲食店で休憩を取った後、ユウはまず収入源について試してみたいことがあり、手頃な質屋を訪れる。
買取が高そうなところを朝の間に下調べ済みだ。
「買い取って欲しい商品があるのですが。」
眼鏡を掛けた店主は、新聞をずっと読んでいた。
机の傍に置いてある、半分ほど残ったコーヒーはもう冷め切っている。
飲み干し中身を入れ替えようかと思っていた時、こんな時間には珍しい来客がきた。
ユウに話しかけられて、新聞を読む姿勢はそのまま、目だけを上に向けた。
「これ、いくらになりますか。」
ユウはバッグからいくつかのアイテムを出した。
ゴブリンやオークからドロップした必要無さそうなアイテム、森林で拾い、操刻で新品に戻したアイテム。
店主は眼鏡を持ち上げてユウから商品を受け取った。
新聞をパタンと閉じて、商品を見る。
ユウは長い時間が掛かるだろうと踏んでいたが、店主はレベルの高い鑑定のスキルをもっており、その査定はすぐに終わった。
「これとこれは、あまり値段にならないね。3つ合わせて合わせて3000コインだな。」
「3000コイン?」
店主が黙って銀貨3枚を取り出す。
そうか、銀貨1枚が1000コインってことか、ユウは察した。
「買い取る?どうする?」
ゴブリンの棍棒とオークスピアが並べて置かれる。
命がけで戦ったのに、世知辛い事だ。
武器としての性能は大したことが無いので仕方がないか。それでも、宿泊1泊分に届きそうな買い取りなので、悪くない。
ユウは首を縦に振り、銀貨を受け取った。
質屋は続いて、森林のキャンプ地に廃棄されていたアイテムに目を通した。
もちろん、ユウが拾って操刻で新品に戻してある。
「これらは状態が良いな。新品同然だが……。もしかして盗品か?」
「いえ、主人からの使いで来てるので、盗品ということは無いかと」
質屋には盗品を通報するシステムがあった。
ユウはこうなる事態を予期して、従者からもらった伯爵の紋章の入った手形をチラッと見せた。
「ミクラ家の従者の方でございましたか。これは失礼した。」
「いえいえ、いいんです。私のような者が新品を持って来れば、そう思うのも無理はありません。」
「ミクラ家の者なら、私も安心して買い取ることが出来る。」
「私はあくまで使いなので、ミクラ家とはあまり関係無いんですけどね。」
ユウは少し冷や冷やしたが、上手くいったことに胸を撫で下ろした。
嘘を吐くことは嫌いだが、利用できるものは利用しないとこの世界では生きていけない。
盗品でないことを証明することは難しいので、この程度の嘘は許してもらおう。そう考えて査定を待った。
「状態が良い物と、Bランク以上の物が含まれていたので、これでいかがかな?」
店主は数枚の大銀貨と銀貨を提示した。
先ほどまでの無愛想な言い方とは違い、立場ある者と見做したのか、ユウに対する態度も少し畏まった。
「良ければ、内訳を教えていただきたいのですが。査定が良かった物は主人伝え、今後の参考にさせていただきたいので。」
「そうでしたな。ではこちらから…。」
店主は片手剣を指しながらこう続ける。
「こちらはラーマ鉱石の剣。状態が良く、片手剣は人気がある商品なので、3万コイン、つまり大銀貨3枚分ですな。新品では店頭での販売価格が5万コインくらいなので、マージンを差し引いてこのくらいかと。」
「続いてこの斧も状態がいい。武器だけでなく伐採や工具としても使用されるので、1万5千コイン。大銀貨1枚と銀貨5枚分。」
装備の類は壊れることも多く、冒険者が頻繁に買い換えるものなので、高額らしい。
水筒やランタンなどの冒険に必要な用品も、高額では無いが買い取ってもらえた。
「……以上で、総額は大銀貨6枚と銀貨8枚ですな。」
「丁寧にありがとう。帰ってそのように主人に伝えます。」
「うちは何でも買い取るから、またご贔屓に。もっとも、専門店ではもっと高価で買い取って貰えるかもしれないが、あちこち店を周るのが手間ならうちがまとめて買い取るよ。」
ユウは深々とお辞儀をして店を出た。
収入源についてのアテは当たりだった。
しかし、手にした多額のコインよりも、そこで得た通貨の価値や買い取る際の商品など、情報として得た物の方が大きかった。
このまま森でアイテム拾いと、操刻を続ければ、しばらく飲み食いに困ることは無いだろう。
操刻という名のリサイクル。森のゴミも減って良いことだらけだ。
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店を出ると、近くの武器屋から大きな声が聞こえる。
「こんな粗悪な物売りつけやがって!!すぐ壊れたじゃないのよ!」
「何ィ?!お前の使い方が悪いんじゃないのか?!」
「魔物との戦闘でいいも悪いもあるかっ!」
「とにかく、うちの商品にケチを付けるのはやめてくれ。嫌なら新しいのを買うんだな。」
「不良品なら交換するのが筋じゃないの?!」
お互いに一歩も引かない、という状況である。
よくある光景なのか、他の冒険者や商人は見て見ぬ振りをして足早に去っていく。
巻き込まれてややこしい目に遭うのだけは避けたい。あえて見ないようにする人の様子がそれを物語っていた。
ユウはそんな暗黙の了解を知らず、女の方を見る。
その見覚えのある栗色の髪と、気の強い性格。
それは昨夜『鹿の子』の心地良いベッドで見た夢に出てきたその人物に瓜二つであった。
「え…?睦月先輩…?」
見知った顔がそこにあった。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
少し説明的な会になってしまいました。
次回以降、動きを出していく予定でいます。




