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アザレアを君に贈ろう

作者: 柊 仁

主人公の颯太郎は今の僕をイメージして書きました。

いじめに悩んでる人はたくさんいると思います。

でも、負けないで下さい。貴方達には仲間がいます。

それを忘れないで下さい。

出逢い


高校生になって二ヶ月が経った。

「時が過ぎるのは早いな...」春風にさらされながら橋場颯太郎は学校への道のりを一人で歩いていた。周りには同じ制服を着た生徒たちが楽しそうに話しながら歩いている。

「やっと高校生になったのに僕は一緒に学校に行く友達もいないのか」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


志望校の西陵高校に入学するために受験勉強に励んでいた僕は家の近くの図書館で数学の参考書を睨んでいた。受験期だからきっと混んでいるだろうと踏んで開館一時間前に並んでいたが、そんなこともなく図書館はガラガラで見かけたのは貸し出しの待合席でなにやら興味深そうに新聞を読んでいる老人だけだった。

「こんなに空いてるなら一時間前に来なくても良かったかな。でもこの方が集中出来るぞ」

颯太郎は冷たい雰囲気の中で一人燃えていた。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

始めてから何時経っただろうか。窓の外を見る

と綺麗な夕陽が花壇に咲いているアザレアに差し込んでいた。こんな綺麗な花を今まで見たことがあっただろうか。颯太郎の目はすっかりアザレアにとらわれていた。すると隣からガタッという音が聞こえてきた。視線を隣に移すとそこにはこのアザレアと同じくらい、いやそれ以上だろうか。長い黒髪に薄紅色の瞳、ぴんと張った背筋をした美少女がそこに座っていた。

「隣、いいかしら」美少女は僕に目も向けずそう言うと黙々と勉強を始めた。

「どどど、どうぞ!」

どうしよういきなり言われたから緊張して噛んじゃった..変に思われたかな

いつだってそうだ。僕は引っ込み事案で弱虫で誰かと話すこともろくに出来ない。何か悪口を言われても言い返すことができないから中学でいいように扱われ、いじめられていた。だから自分をリセットする為に地元の中学から遠い西陵高校を選んだんだ。絶対に落ちるわけにはいかないんだ。

颯太郎は気をとり直して数学の問題を解いていった。

隣の美少女も集中して問題に取り組んでいる。

今まで冷たかった空間が颯太郎には何故か柔らかく感じた。二人だけの空間。〜〜〜〜〜〜〜

「よし、終わった!」

隣を見るとあの美少女はいなくなっていた。

「いつの間に..僕も帰るか」

図書館を出ると辺りはもう真っ暗になっていた。「今日はいつもより頑張れたなぁ」

「また、あの子に逢えるかな」

颯太郎は期待に胸を躍らせて帰路に着いた。

それから颯太郎は毎日のように図書館に通った。しかし、あの美少女が現れることは一度も無かった。


再会



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


自宅から自転車で近くの駐輪場に停め、そこから15分程歩いた所に西陵高校はある。

そう僕は今西陵高校に合格し、立派な高校生なのである。「二ヶ月も登校してるとこの道も慣れてきたなぁ」

校門をくぐって下駄箱で上履きに履き替え、渡り廊下ずっと歩くと1-5の標識が見えた。

これが僕のクラスだ。

カラカラと小さな音を立ててドアを開け、誰にも見られないように自分の席に着く、これが僕のルーティーンだ。

このクラスには僕にとって友達と呼べる人はまだいないのだ。高校生になったら自分をリセット出来ると思っていたらそんな事は無かった。一度だけ女子に話しかけられたことはあるが、気が動転して顔も見ることが出来ず、話すことは出来なかった。それから周りのスクールカースト上位の女子や男子たちが颯太郎のことを見て何かヒソヒソ話す事が増えていった。内容は聞こえないが、きっと悪口だろう。人と話すのが苦手な事の何が悪いのだろうか。悪口だと信じ込んでいくうちに、周りの会話が全て自分に対しての悪口なのでは無いかと颯太郎は疑心暗鬼になってしまった。そうすると周りに対しての態度ももっと消極的になっていき、クラスメイトもそれを見てうざい、キモいなどとわざと颯太郎に聞こえるように話していた。気がつくと颯太郎の高校生活は中学と同じようになっていた。

午前の授業が終わり昼休みの時間になると颯太郎はお弁当箱を持って屋上に向かった。

ここは颯太郎にとって唯一の癒しの場なのである。いつも颯太郎以外誰もいない為、人目を気にすることなくお弁当を食べることが出来た。

だが今日は先客がいた。

その先客を見て颯太郎は目を見張った。

柵に肘を掛け街の景色を眺めていた先客は、あの日見た美少女だった。

よく見ると泣いている。

「あの人、この高校だったんだ。でもなんで泣いて..」

颯太郎は彼女に逢えた嬉しさと彼女が泣いているのを疑問に思う気持ちでよく分からなくなった。気がつくと颯太郎の足は彼女の方へ向かって行った。「あ、あの」あれ?何で僕話しかけてるんだ?普段は顔を見ることさえ出来ないのに..。颯太郎にはかすかな期待があった。

「...何かしら...見たのね...」

彼女は人差し指で涙を拭った。

「すみませんっ...その、僕のこと覚えていませんか?」

「ごめんなさい。覚えて無いわ」

「ですよね..すみませんでした」

まぁ僕のことなんて覚えてるわけないよね..第一ちゃんと話した訳じゃ無いし..。戻ろう。

颯汰郎は別の場所でお弁当を食べることにした。

「待って」

彼女が僕の背中に呼びかけた。

「私が泣いてた理由、知りたい?」


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「1-8の川上渚っていうの」 「え?」

「私の名前よ」

「あ、あぁ。僕は橋場颯太郎です」1-8と1-5は違う階になっている。どうりで会わなかったわけだ。

「颯太郎くんね、よろしく」

そう言うと渚は右手を颯太郎の前に差し出してきた。

「よ、よろしくお願いします!」

颯太郎の手は緊張でぶるぶる震えていてまるでF1カーのエンジンの様だった。

「くすっそんなに緊張しなくていいのよ」

「それで、私が何で泣いていたかだったわよね。」

「はい」

「私ね、いじめられてるの」 え?

「中学の頃にね、クラスに毎日のようにいじめられてる女の子がいて、とにかく酷かったわ。

その女の子は耳が不自由な子だったんだけど、

いつも耳に補聴器をつけていたの。」

「彼らはそれを気持ち悪がって補聴器を無理矢理取ったり、耳が聞こえない事をいいことに悪口を言ったりしてたわ。それまで私は巻き添いになりたくないからって黙っていたけどあまりに酷かったから皆の前で先生に訴えたの」

「そしたら彼らの親も呼び出されてクラス中の問題になったわ。親からも先生からも怒られて彼らは泣き叫んでいたわ。これでやっと終わったと思ったその次の日、今度はターゲットが私に回ってきたの。そこからは地獄の日々だったわ。高校になってやっと終わったと思ったけど、いじめていたグループの一人が偶然同じクラスにいて、ありもしない噂が広まってまたいじめが始まったってわけ。」

「そんな事があったんだ..」

「でも私のした事は間違ってないって思ってる。だって一人でも救われた子がいたんだから。」

「だから私は負けない。高校でも学級委員を続けて一人でも私と同じような子を救いたいから。」

彼女の目にはもう涙は無い。そこには希望と強い信念が見えた。

「君は凄いね。僕なんか何か言われても言い返す事が出来ないから、いいように扱われるし、挫けてすぐここに逃げちゃうんだ」

「別に逃げる事が悪いとは思わないわ。私だって今日ここに逃げて来たんだもの。

それでね、思いっきり泣くの。ここなら誰にも見られないしね。そうすれば辛いことも何もかも忘れられるから。颯太郎君には見られちゃったけどね。」

「逃げても、いいの?」

「うん。」

「泣いてもいいの?」

「うん。」

その時今まで颯太郎の中に溜まっていた何かが込み上げて来た。

「うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ」

人に泣く所を見られるのは嫌だったけど彼女の前だったら何かいい気がした。


決意


昼休みが終わり、彼女と別れ颯太郎は教室に向かった。

「決めた。僕はもう誰にも負けない。僕は"僕"なんだ」

この日から颯太郎の新たな人生が始まった。






最後まで読んでいただきありがとうございます。

高校生で小説家を目指している柊 仁です。

途中で〜やーなどの線がありますが、これは時間の遡りや経過を表しているものです。

分かりづらくてすみません。


最後に


"自分"を持って強く生きろ!!


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