第8話[平和な日常]
外へ出ると新蔵殿が妹の雨季と遊んでくれていた。
雨季は私を見るなりボールを手にして寄ってくる。
私は雨季の頭を撫でてやる。
「雨季、今日は姉様が猪を獲ってきてやるからな。お肉いっぱい食べれるぞ。」
喜ぶ雨季の姿は可愛い。
抱きしめて持ち上げてやる。
キャッキャっと喜ぶ雨季。
私の宝だ。
「時雨ちゃん、僕も何か手伝うよ。」
心配そうに新蔵様がおっしゃる。
不愉快だ。
私一人で狩らなければ意味が無い。
「結構です。新蔵様は私を子供扱いし過ぎです。そんなに子供だとお思いなら婿入りの話は無かった事にして頂きたい。」
私がそう言うと新蔵様は悲しそうになさる。
フン、私を子供扱いした罰です。
少し反省して貰わねば。
…。
「姉様、駄目。お兄様に意地悪しちゃ駄目。」
雨季に鼻を摘まれてしまった。
うむ、確かに雨季の言う通りだ。
少し言い過ぎてしまった。
「申し訳ない、言い過ぎました。新蔵様の婿入りに反対しているつもりは無く、その…。子供扱いが気に食わなかっただけで…。」
笑われてしまった。
恥ずかしい。
「もう、笑わないで下さい。私は猪を狩に行くので失礼します。」
雨季を置き、私は足早に森へ向かう。
今日こそは猪を狩らないと。
木に登り、他の木々へと移動する。
猪の糞を見つけてはいつのものかを調べ探して行く事、数時間。
見つけた。
私はクナイを握りしめ、猪の額を狙う。
慎重に、慎重に。
そう自分に言い聞かせ狙う。
だが…。
「なっ…。」
猪の子供が数頭現れる。
私はクナイを握り身を縮めた。
目から涙が溢れ落ちる。
「悔しい。これじゃあ殺せないじゃないか。」
私はクナイを仕舞い帰路につく。
日は沈み暗くなっても家に帰れないでいる。
爺様に何言われるか怖い。
雨季のがっかりした顔を見たくない。
私は一人泣き、川で泣いていた。
「やっぱりいた。」
新蔵様がたいまつを手に現れる。
「殺せなかったんだね。」
そう言うと新蔵様はたいまつとは別の手で持っていた猪を私の前に置く。
「今朝仕留めた奴、血抜きもしてある。良かったら…。」
気がつくと私は新蔵様に暴言を吐いていた。
新蔵様はただただ、それを黙って聞いていた。
「落ち着いたかい?」
新蔵様はそう言うと私の頭を撫でる。
もう、また子供扱いをして…。
いや、子供だ。
思い通りいかず、好意を馬鹿にされたと思い暴言を吐いた。
そんな私は立派な子供なのだ。




