第7話[恭子ちゃん驚愕事件]
霧吹きを沢山携えて山道を登る。
ドンが抱えている姫の下半身に海水入りの霧吹きをかけて下半身を潤してあげる。
下半身の乾きにさえ注意していれば山道も大丈夫らしい。
恭子を捜す事、三十分。
「あっちの方から何か臭うぞ。」
姫が指さす方へ行く事、数分。
焚き火をしていた恭子が居た。
「達子と蛇乃…と、後変な人達。」
恭子が達子から姫の話を聞いている中、蛇乃は思った。
あれ、さっき姫ったら何か臭うぞって言ってなかった?
言ってたよね。
あれって恭子の体臭の話しだよね。
きっとそうよ。
姫とドン、すっごい鼻摘んで臭そうにしてるもん。
人魚達が鼻が良い何て知らなかったけど…。
フフフ、この事は恭子に報告しなきゃね。
そう思い蛇乃は恭子に声をかけようとする。
蛇乃がねぇ、きょう…とまで口に出した時だった。
「うっわ、しょっぱい。」
急に蛇乃の口に海水が入り、ペッペッと地面に唾を吐く。
そんな蛇乃に達子は腕に手を回し、霧吹きを蛇乃の顔に押し当てる。
「あれは焚き火から出る煙を嫌がってるの。焚き火の煙って臭くてたまらないもんね。まあ、頭の良い蛇乃ならこんな事を言わなくても分かってくれるだろうけど…。」
達子は蛇乃の目の前で霧吹きをシュッシュする。
蛇乃はゆっくりと頷き、達子の腕から解放される。
「ふう、ねぇ恭…。むぐっ」
達子は再び蛇乃を捕まえ口の中に霧吹きの先端を無理矢理入れる。
「ねぇ知ってる?海水って飲めば飲むほど喉が乾くんだよ。こんな山の中で海水をいっぱい飲めばどうなるか?蛇乃なら分かるよね?私、物分かりが悪い子は嫌いだよ。」
ブンブンと頷く蛇乃。
そんな達子と蛇乃を見て恭子が口を開く。
「二人共、何してんの?」
あははと笑い、何でもないを連呼する達子。
そんな中、姫が恭子に言う。
「おぬし、くさ…。」
慌て姫の口を塞ぐ達子。
「良い姫ちゃん。海の掟で人間と関わる事が重罪のように、地上でも女の子に対して臭う事を伝える事は重罪なの。分かった?」
それを聞いて姫は頷いた。
達子の手が口から離れた時、姫は笑顔で達子にお礼を言った。
「それは知らなんだ。感謝するぞ達子。また間違った事があれば教えてくれ、人間に嫌われたくはないからな。」
そう言うと自分の両手で口を塞ぐ姫。
そんな姫を可愛いと思い眺めていると…。
「そこん娘、くさ…。」
達子が動き出す。
「いでごわす。」
「ハアアアイイィィ。」
ドンの言葉に被せ恭子に聞こえない様に叫ぶ。
そして二段蹴りをドンに喰らわせた。
倒れ行くドンを見つめ、蛇乃はこれはマジの奴だと思った。
普段、叫ぶ事をしない達子がハアアアイイィィと叫んだ。
こうする事で恭子にはそこん娘くさまでしか聞こえない。
更に言えば恭子には、そこん娘草www的な感じに捉えただろう。
そして恭子はネット用語を知らない。
つまり、何言ってんだコイツって思ったに違いない。
そして達子。
今の達子ならハアアアイイィィの掛け声と共にジャンピング回し蹴りができた筈だ。
それをせずに二段蹴りを選んだ理由は一つ。
ドンに舌を噛ます事だ。
ジャンピング回し蹴りの大技を達子がした所でドンには何のダメージは無いだろう。
だが、二段蹴りだと衝撃で口を閉じてしまう。
ちょうどそこに舌があったのなら…。
蛇乃は地面に落ちたドンの舌を見る。
達子ってば成長したわね。
あんなグロい事を平気でできる様になるなんて。
格闘技部に入部したおかげかしら?
舌だけに…。
蛇乃が一人で感動している中、達子は震えながらドンに謝った。
「ドン君ごめんでごわす。こんな事するつもりはなかったでごわす。」
取り乱す達子に姫は落ち着けと言う。
「達子が謝る事は無い。元はと言えば、こやつが重罪を犯したんじゃ。舌一つで済んだだけでもありがたい事じゃ。達子は本当に優しいな。」
姫の笑顔が直視できない達子。




