第5話[鬼頭達也という男]
「ちょっと血子ちゃん、世界一急に強くなったじゃなくて急に世界最強になったでしょ。片代さんだって日々努力をしているんだから、そんな事言ったら失礼でしょ。」
そう言って現れたのが術野麗。
よく血子と行動を共にし、血子が居ない時は占いをしている。
彼女の占いはよく当たるそうでクラスでもかなりの人気者だ。
「いや、その。まあ、日々頑張ってるけど…。」
一瞬否定しようとした蛇乃だが、後が面倒くさくなりそうなので話しを合わす事にした。
バスケを一旦中止して皆んなが集まる。
達子は血子と麗に達也を紹介し血子が達也の顔をまじまじと見る。
「流石達子ちゃんのお兄さん、優しそうだね。」
血子の言葉に反吐が出そうになる蛇乃。
そんな蛇乃を他所に達也は笑顔で対応する。
そんな中、達子が二人をバスケに誘う。
「うん、やる。」
血子の即答に麗はため息を吐きながら占い始めた。
「それじゃ、私は達子ちゃんチームに入るわ。」
麗がそう言うと蛇乃は眉間にシワを寄せ反応する。
麗が達子チームに入るって事は達子チームが勝つって事?
占いなんか信じてないけど、なんかむかつくわね。
蛇乃がそんな事を考えていると血子が心配そうに達子チームの三人に言う。
「大人が居るとはいえ大丈夫?あんまり運動得意そうには見えないんだけど、私達圧勝しちゃったりしない?」
そんな事を言う血子に達子が自慢気にバスケが得意だと言う。
「そっか、なら丁度いいかな。それじゃ、バスケ始めようか。」
血子がそう言ってボールを持つ。
話し合いの結果、先攻は達子チームで血子は達子にボールを渡した。
ドリブルをして血子を抜こうとする達子。
「えい。」
血子は達子からボールを奪い、蛇乃チームの攻撃が始まる。
「血子ちゃんやるね。でもそう簡単には抜かさないよ。」
そう言ってディフェンスを張り切る達子だったが、簡単に血子に抜かれてしまいゴールを許してしまう。
ぽかーんとする達子。
そんな中、蛇乃が血子に近づき手加減するよう注意した。
「えっ、達子ちゃん上手いんでしょ?さっきのは私の実力を試そうとしたんじゃないの?」
頭にハテナを浮かべる血子に蛇乃は手加減するよう強く言った。
意味が分からないまま血子は手加減する事を承諾して、プレイが始まる。
蛇乃がこれで大丈夫だと恭子に言う。
それを聞いて恭子は安堵した。
これで達子が傷つかなくて済む。
そう思った矢先。
「えい。」
全く手加減する事も無く血子は達子がボールを奪った。
空いた口が塞がらない蛇乃と恭子。
そのままプレイが続き、血子は達子を簡単に抜きゴールを決める。
達子の瞳から涙が溢れそうになる。
麗は血子の行動に頭を抱える。
蛇乃、恭子、麗が恐い顔で血子の所へやってくる。
三人に一斉に怒られる血子。
「きっと私の前世はライオン何だよ。ライオンは兎を食べるのに必死何だよ。だから手加減しているけど全力に見えちゃうのかな?」
満面の笑みの血子。
蛇乃と恭子はポカンとしていた。
血子が何を言っているのか分からない。
獅子は兎を狩るのにも全力を出すと言いたいんだろうけど、意味が分からない。
蛇乃が頭を悩ませている中、麗が血子に言う。
「血子ちゃん、あなたの前世はハエよ。」
それを聞いた血子は膝から崩れ落ちる。
「そういえば、冬はよくハエみたいに手を摩っていたっけ…。はっ、ご飯を食べる時もだ。ご飯を食べる前、よく手を合わせてしまう。」
それを聞いた恭子も膝から崩れ落ちる。
「私もだ。そうか私もハエだったんだ。だから臭く…。」
いきなりの恭子乱入で麗が焦る。
蛇乃は麗の肩を掴み首を横に振る。
馬鹿に関わっても仕方がない。
蛇乃の意図を汲み、麗は頷いた。
「コホン、ハエはともかく。血子ちゃん、達子ちゃんの顔を見て。」
麗に言われ血子は達子の顔を見た。
どんな顔をしているか聞かれ血子は辛そうにしていると答えた。
「血子ちゃんは達子ちゃんが好きなんだよね?」
頷く血子。
「なら、手加減してあげなきゃ。それに血子ちゃんはヒーローなんだから。」
血子は頷き、立ち上がる。
「ありがとう麗ちゃん。私、大切な友達を傷つける所だった。」
拳を握りそう言う血子に三人は思った。
もう傷つけてるけど。




