第3話[達子大ピンチ]
信じられなかった。
私が買ってきた高級チョコをあの聖人のような鬼頭達也が自分で買ってきたかの様に渡すなんて。
私はその日、達子の家に行き鬼頭達也を問い詰めた。
もしかしたら何かの間違いではないか。
そんな事を考えながら話しをする。
「ああ、あれね。ごめんごめん。お金なら返すよ。一万円あれば足りるよね?お釣りは返さなくていいから。」
殺意が湧く。
許せない。
こんな気持ちになったのは達子が虐められて以来だ。
私はお金何かいらないと叫ぶ。
私が求めているのは訂正だ。
昨日渡したチョコは私からのプレゼントだと達子に説明して欲しい。
その事を伝えると奴は…。
「いや、女の子同士でチョコを渡すのはおかしいでしょ。あのチョコ、友チョコとは違うよね?友チョコならあんな高い奴買わないでしょ。ましてや蛇乃ちゃんみたいな子供が。」
何もいい返せない。
確かに私は友チョコのつもりで買ったんじゃない。
達子の事が好きだから、愛しているから買ったんだ。
だけどそれを達子の兄であるあいつに言える訳がない。
もし、達子のおば様やおじ様に知られたら、達子に会えなくなるかもしれない。
もし、達子に知られたら、嫌われるかもしれない。
黙る私にあいつが言う。
「困るよ達子ちゃんにそんな感情を向けられては、達子ちゃんは優しいから悩むだろう。君と友達として付き合いたい。だけど恋人としては無理だ。そんな風に悩み苦しむ。僕は兄として、達子ちゃんを護りたいんだ。頭の良い蛇乃ちゃんにはわかるよね。」
達也は私に一万円を握らせる。
「あのお金だって君のご両親、もしくは親類が稼いだお金だろ。だったら君の為に使わないと、君が他所の子に貢いだなんて知ったら君のご両親や親類の人が悲しんじゃうよ。」
私は他所の子じゃないもんと呟いた。
だけど…。
「いや、他所の子だよ。蛇乃ちゃん、君と達子ちゃんには血の繋がりがないからね。僕が達子ちゃんに高級チョコをプレゼントしたって聞いたら僕の両親や親類の人は喜ぶだろう。兄妹仲良いねって、だけど君はどうかな?」
情けない事に涙を浮かべ俯いていた。
私の両親は達子の為に貯めていたお小遣いを使ったと言ったら喜んでくれるだろうか。
両親は私にべったりだから達子の事をよく思わないかもしれない。
こればかりは話してみないと分からない。
だけど、両親に話す勇気がない。
もし、達子の事を悪く思われたらと思うと怖くて言えたものじゃない。
対してあいつは、貰ったお小遣いを達子の為に使ったと両親に話せるだろう。
あいつが言ったように兄妹仲良いねで済むから。
これが私とあいつの差だ。
私は悔しくて一万円を握りしめ、泣きながら走って家へ帰った。
家に帰るなり部屋に篭り親にバレないように大泣きした。
あいつだけは許さない。
絶対に許さない。
鬼頭達也にだけは負けない。
負けたくない。
そう思った。
翌日、達子に高級チョコを買ったのは私だと言っても信じてもらえなかった。
少し困った顔をする達子に私は冗談だよと言って笑顔を向ける。
内心、信じてもらえなくてかなりショックだったが仕方がない。
恐らく鬼頭達也を知る人、百人に聞いたら百人全員信じないだろう。
だから達子が信じないのも仕方がないのだ。




