第12話[ハナの過去]
ハナの扱う超蝶流は全盛期だった頃の翔子を超えていた。
それ程の人物がわざわざこんな大会に出場するという事は何らかの意図がある筈。
それは恐らく、超蝶家が自分に格闘技をやるなと言っているんだ。
そう翔子は勘違いしてしまった。
「お父さんもお母さんも私の結婚を反対してたもんね。超蝶家の人間をよこして私に格闘技をやるなって伝えに来たのね。」
涙ぐむ翔子を見て、傷つくハナ。
何か誤解をしているのならば早く解かねば、そう思い口を開くが、ハナより先に翔子が喋り始めた。
「でもすごいのね。全盛期の私でもあなたに勝てなかったわ。最後に貴方みたいな人と闘えて良かったわ。これからも頑張って、応援するから。」
精一杯、笑ってみせてくれたのだろう。
その笑顔は弱々しく、ハナはそれ以上、口を開く事ができなかった。
会場のベンチで一人で泣くハナ。
師範も声をかける事が出来ず、影から見守る事しか出来なかった。
やがて、ハナの第三試合が始まる。
師範は棄権する事を伝えに本部へ向かう。
ハナはベンチで一人床を見つめ、自分を責めた。
この大会に出場しなければ、翔子さんは格闘技を辞めなくて済んだ。
私が翔子さんと闘う事を夢みなければ、翔子さんは格闘技を辞めなくて済んだ。
私が格闘技を始めなければ、翔子さんは格闘技を辞めなくて済んだんだ。
全部、全部私のせいだ。
そう一人で自分を責めていると、恭子がハナの元へ駆け寄ってきた。
「ハナさんすごい。私もハナさんみたいに強くなりたい。」
恭子ちゃん。
そうか、そうだ。
恭子ちゃんが居るじゃない。
恭子ちゃんに超蝶流を教え、いつか自分と…。
そう思い、ハナは恭子に声をかけた。
「恭子ちゃんは格闘技に興味あるの?」
恭子は笑顔で頷いた。
「私ね。差異狂流を世界一の流派にするの。」
笑顔で夢を語る恭子に苛立つハナ。
そうだ。
私は悪くない。
悪いのは全部、差異家の人間だ。
差異恭之助さえ居なければ、翔子さんが格闘技を辞める事は無かった。
差異狂流を世界一の流派に?
笑わせる。
ならば、私は全力でそれを阻止してみせる。
差異狂流より超蝶流が優れている事を私は証明してみせる。




