97 最後の読み
「よし、距離は開いた」
中田の方も後ろから追っては来たものの俺が態勢を立て直すだけの時間を稼ぐことは出来た。
周りに多少の死体は転がっているものの開けた木陰になるようなものは一つも無いエリア。
中田の攻撃は確かに大剣持ちにしては早い。だが、言っても「大剣持ちとしては」だ。葵の剣や咲の銃弾を避けることに比べれば止まっているボールを打つようなもの。
一発振り下ろされた攻撃をバランスよく避けることが出来れば、野球のバットを振るような感じでスイング。もちろんこの程度の攻撃はあのおっさんには躱されるだろう。
だが、それを避けたとすれば体は自然とのけ反る。それが狙いだ。
のけ反った状態から立ち直るにはそれ相応の時間がかかるし、あの大剣を振るう事は無理だろう。
そうなったらあとは、無抵抗の体に一突き。真正面から入れてやればいいだけだ。
中田も走りながら背負い投げをするかのように大剣を担いでいる。
目線の方向から考えて、あの剣を振るう位置は俺の少し左側。俺がそっちに避けるという考えてか。
俺は体を右にふわっと浮かせた。とは言ってもバランスはしっかり保って。どんだけ本を積んで平均台を歩いたと思っている。
バランス感覚は完全に体に染みついていた。
足がしっかり地についてなかろうとも牽制として振るう剣くらい振れる。
これまた何日間も特訓してきた金属バットの素振りの要領で俺はそのまま水平に空気を切り裂いた。
あとは一突き…………そのはずだった。
だが、相手はのけ反っていない。上手くしゃがんで避けられている。
まずい。
相手はその状態からニヤリと不気味な笑みを浮かべるとまっすぐ俺の体に剣を向けてくる。
しゃがんだ状態から煽るように飛んでくる剣を避けるのはほぼ不可能。
俺は瞬間的に目を閉じた。誰だって鋭利なものが急に目の前に現れたらそういう行動をとる。
そして俺はこのポジションまで走ってきたことによってできた最後の望みを信じてそのまま立っていた。
……三秒……五秒と時が過ぎる。一瞬なのだろうけど永遠に感じる時間たち。だが、さすがに八秒くらい立ち尽くしたあたりで何かが起こったことが分かった。
さすがに殺されるには時間がかかり過ぎている。
俺はそっと目を開け、眼前に広がる光景を眺めた。
とは言っても大量の情報は入ってこない。俺の目に映っていたのは、ほんの十センチくらいまで近づいていた大剣の先っぽとその剣を握る手からその先がカチコチに凍り付いた大男。
勝利の表情に満ちたその勇ましい顔はまるで英雄をたたえる銅像のように堂々とそこで凍り付いていた。
最後の読みがドンピシャで当たったようだ。
「ったく、何が読みよ! ただの人任せじゃない‼」
朗報です!
USB紛失事件とともに無くなったと思っていた本編の原案資料が紙媒体で刷られているものを発見しました‼
これでとりあえずは直書き生活から脱出出来るっぽいです。
ところどころ見苦しい描写もあったと思いますが取りあえず最後まで書きあげることは出来そうです(以降も完全に見苦しい描写が無くなるかと言われれば無くならないと思いますがご容赦を……)
また、原案を発見したことで飛ばしていたストーリーがいくつかあったことが分かったので次の章からはそちらのストーリーを公開していこうと思います(って言いつつまた旅行なのがちょっと苦しい。まぁ今度はクラスみんなで旅行します(笑))
これからもどうぞよろしくお願いします




