93 圭の前に塞がる敵
ひっそりとした山の真ん中でありながら相変わらずの激戦が繰り広げられていた。
俺の剣から放たれる炎が、葵の氷が、敵の放つ様々な魔法が、まるで花火のようにこの山の中でバチバチとぶつかり合う。
「さっすが雲雀学園の中でも優秀生徒って言われるだけのことはあるわね」
陽子さんもまた、敵をなぎ倒しながら俺たちを褒めた。何ならさっき数十人の敵に囲まれながら回転切りの要領でその敵を一網打尽していた姿を見ると彼女も相当強いはずなのに。
絶対に敵に回したくない人間。
だが、それを裏返せば味方としてここまで信頼できるという事だ。
さっきまで隠密隊の人たちが押されていたという事実が嘘のように形勢は逆転し、まるで台風に巻き込まれる砂のようにイベルタスの構成員は次々と空に舞った。
正直大したことない。イベルタスが堂々と脅しをかけるくらいだからどれくらい強いのかと不安にもなったが期待外れだ。
そんなイケイケのムードそのままに俺が突き進んでいると久しぶりに剣をはじかれた。
「ったくよくもまぁ俺の部下をホイホイと殺してくれたもんだな」
目の前に立ちはだかるは、自分よりも身長の高い大男。たくさんトレーニングを積んだのだろうか顔の骨格を眺めるだけでも、筋力が強いことが一瞬で分かる。それに加えていかつい中世騎士のような鎧に短く刈り上げた角刈りと来たもんだから威圧感がすごいったらありゃしない。
「あんまり調子に乗るんじゃねぇーぞ!!」
男が大剣のような太い剣を振り上げる。対象を斬るべく見つめる彼の目は、獲物を一切逃がさない蛇のそれと同じように鋭い。
「ぐぅ……」
何とかして彼の剣を止めはしたものの重い。両手がビリビリする。あれか、野球の硬式ボールを芯で打ち損なったときの痺れってこんな感じか。それに威力も強く、このままでは地面に埋め込まれそう。
「ほぉ、初見で俺の剣を止めるとはそこら辺の雑魚とは違うという事か」
「あ、当たり前でしょうが。そんな避けられないくらい速い剣でも無いだろ。お前のは」
その瞬間に彼がムッと不快感を覚えたのが目に見えて分かった。
え? 俺間違ったこと言った⁇ 確かに剣の威力はすごいけど初見で避けられないほど速くもトリッキーでも無いだろ。
「言ってくれるな。これでもイベルタス軍第三大隊長としての意地があるからな。俺の名は中田重治だ」
「大隊長とは大したもんだな。そんな奴が前線はって戦ってるって事は俺たちの勝利が近いって考えていいんだよな」
「まぁ確かにこの戦いは時期に終わるだろうな。近づいているのはお前たちの勝利では無く、敗北の間違いだが」
この会話中、お互いに目を逸らすことは一切なかった。
もともと中田重治さんってレグルド的な名前にしようと思ってたんですけど外国人チックな名前にしてしまうと「圭君英語喋れないのに……」みたいな問題が発生するので断念しました。
あんまり日本人で戦っている最中に「俺の名は」ってフルネームで語る事無いですよね(笑)




