92 開戦。イベルタス戦
翌朝。俺が目覚めたのは目覚まし時計でも葵の声でも、陽子さんに呼ばれてでも無かった。
爆撃音。
まさに戦争をしていた頃の人ってこんな感じだったんだろう。いつ空襲の被害にあうかも分からないような状態で何時にたたき起こされるか分からない状況。
「圭君・葵ちゃんすぐに着替えて外に来て」
陽子さんは廊下を柄にもなくドタバタと走りながらどこかからか声を上げていた。
当然異常状態なことは明らか。時計を見ると短い針はまだ「八」に届いていない。つまりイベルタスが脅迫文に記した時間よりも早く来たという事になる。
窓から外を覗けば昨日までは見ることの無かった大量の人間がおんぼろの宿を囲んでいた。あちこちでは戦火の火がのろしのように上がっている。
俺と葵は即座に着替え、剣を手に取り部屋を出た。
*
「遅くなりました」
「圭君・葵ちゃん」
陽子さんが敵の剣を抑えながらこちらを振り向いた。
「やっと来てくれたのね。特別待遇林間学校最後の課題よ。ここにいる人大体全部敵だから殺れるだけ殺っちゃって」
すでに先を望めばポツリポツリと黒服を着た、隠密隊の人たちが息絶え転がっていた。それに対して敵もそれ相応には転がっていたが戦力が圧倒的に違い過ぎる。
こちらが不利なのは明白。
「ったく特別待遇ってなんだよ! どこをどう見て特別な待遇をされてると考えればいいんだか」
「でも、たくさんトレーニングはさせてもらえたでしょ」
「あぁ地獄のような日々だったけどな。それに泊まるのも豪華なホテルかと思えばおんぼろな宿だし」
「おんぼろのおかげで圭君は私の裸だって見れたわけだしね」
無駄口をタダ叩いているだけのように見えるかもしれないけど、俺たちは一言しゃべるたびに、一人以上は斬り殺しながら突き進んでいた。
「あ、だからあれは事故って言っただろうがよ!」
「ふふ。でも、結構特訓の成果出てるんじゃない? 私なんかはこうして圭君がしゃべってるタイミングで詠唱をしながら敵に攻撃だって出来ちゃうし」
「確かに、俺も今まで剣を振るっていたのとは感覚が全然違うかもな。なんかめっちゃ軽い。てか、俺のしゃべってるタイミングって、葵話ちゃんと聞いてる」
「――――ローズン。……え? なんて。あ、あ~。聞いてる聞いてる。ちゃんと聞いてるよ。ご飯美味しかったって話でしょ」
「葵さん。しばき倒しますよ」
「え~ちょ、ちょっと待って! さっきのは違うじゃん。たまたま詠唱が間に合わなかったって言うか、大技出してたんだから勘弁」
「へ~大技ね~。その割に対して敵の人凍ってないけど」
「そりゃお互い様でしょ。圭君だっていつの間にかフレイムソード使ってるくせして大して燃えてませんけど」
ったくこちとら話合わせながらやってくる敵を斬っているって言うのに……
「だったら、勝負しようぜ。俺と葵どっちが多くの敵を倒せるか」
「えぇ望むところよ」
ほぼ会話文。
たまにはこんなスタイルの戦いがあってもいいのではないでしょうか




