88 特別待遇林間学校におけるトレーニングの全て
午後も午後とて理解に苦しむような特訓が続く。
一発目は午前中に汲んできた水を使ってあの無駄に広い屋敷中を雑巾がけ。風呂場トイレはそれぞれブラシやたわしを使っての大掃除。
それが終わると今度は大量の書物を音読。なぜか黙読ではなく音読。一時間以内に十冊読み終わらなければ読めなかった分だけ頭に抱えて平均台二メートル。
もしも頭に抱えている本を落としたなら平均台のスタートからやり直しという地獄のルールでこれが終わり次第、例のコースをランニング。
そこまでがこなせ無ければ晩御飯抜きという鬼仕様だった。
「ぶぁ…………死ぬ」
俺がプログラムをすべて終えたのが午後の八時。そもそも本の音読のところで葵が八冊読み終えたのに対して俺は二冊目で終了。次の平均台は二冊しか抱えない葵がさっさと終わらせたのに対して九冊も頭の上に乗せて平均台を歩く鬼畜プレイに俺はリタイア。午後七時に陽子さんからドクターストップのごとく止められ「もういいから走ってこい」と温情は欠片も無く俺は山道ランニングコースを疾走。
そして今に至るのだ。
葵は既にご飯を終え、お風呂に入ったのだとか。昨日の一件を許してくれたとは言え、微妙に警戒しているのではと変な勘繰りさえ入れてしまう。
だが、もっと許せないのはこのメニューが五日連続で続いたことだ。毎日水を汲んでいるはずなのにいつの間にか捨てられているし、毎日掃除をしているはずなのにいつもピカピカにしなくてはならない。
毎日金属バットを百回も振れば手に豆もでき、毎日読む本が変わるから一向に音読するスピードは上がらなかった。
それでも五日目の晩御飯。俺は意地だけで葵のペースに追いつき、久しぶりの三人での食事を迎えていた。
「にしても二人とも頑張ってるね。こんなに耐え抜いたのはこの何だっけ、なんちゃら林間学校が始まって以来史上二組目だよ。普通なら二日と持たずに弱音を吐いて限界。星羅が自慢の子を送っているって割に根性の無い奴らバッカリだったのよね」
とご飯を軽くつまみながら陽子さん。
「というか二組目って事は他にもこれだけの練習を耐え抜いた人が居るんですか」
「えぇ。いるわよ。第一回なんちゃら林間学校生がね」
「第一回」
俺と葵はただその言葉を繰り返した。
「そ。まぁ星羅なんだけど」
「校長!?」
「うん。彼女が第一回のなんちゃら林間学校生であり、これだけの練習メニューを考えた張本人よ」
という事はこの意味の分からないトレーニング達も頭のおかしいあの校長によって作られたものらしい。
「道理で訳の分からない事ばかりやらされるんですね」
冗談交じりに俺がそう言うと一瞬で食事の空気がピリついた。
「もしかして、圭君このトレーニングで何を鍛えているのかも分からずやってるの?」
次回は答え合わせというほどでもないですが、このトレーニングの意味を説明します。
もしよかったら考えてみてください。
※トレーニング内容
山道ランニング(一時間) → 金属バット素振り(百回) → 山の麓まで水汲み → 屋敷の雑巾がけ → 本の音読(十冊) → 平均台 → 山道ランニング(一時間)




