83 珍事件は突然に
あれだけ量のあった夕食もいつの間にか無くなっていた。それでもまだ食おうと思えば食える自分の胃袋に恐怖を感じる。きっと今日は疲れすぎていたんだろう。
「お風呂は沸かしてあるから順番に入ってね」
食器を片付けながら陽子さんは言った。
「どっちでもいいけど、葵から入るか?」
「別に私もどっちでもいいけど……」
このままいけば堂々巡りしそうな会話をひとしきりしたのちに、結局はジャンケンで決めた。
結果は葵の勝ちで、葵から入ることに。
陽子さんの「圭君、女子のお風呂を勝手に覗きに行っちゃだめだよ」という言葉には大変遺憾だったがそれに加えて、
「あ、あと夜にドッタンバッタンしないでね。盛んな年ごろの子たちに暴れられたらこの家壊れちゃうから」と。
「やりませんよそんなの!」俺は、あるわけの無い未来を否定した。
*
葵が風呂に入りに行っている間、俺は先に寝室――――というか生活スペースへとやって来ていた。
手際よく、すでに布団がきれいに二つ並べて敷かれている。
「あのおばさん暴れるなとか言っておきながらこの敷き方には悪意あるだろ」
かといって布団を引き離す気にもあまりなれなかった。荷物が両端に置かれているし、そもそもこの部屋そんなに広くないし。てか、二人分の部屋を用意する余裕がないってどうゆうこっちゃ。
「…………!」
そんなどうでもいいことを考えていると唐突に便意が。 さすがに食べ過ぎた。
俺は速攻で部屋を後にし、縮こまりながらも無駄に広い家じゅうを探し回った。
右に左にまるで脱出迷路を解くように。時には『トイレ右百メートル』なんて看板を見つけてつい突っ込んでしまったり。突っ込んで気を抜いたら漏らしそうになるし。
こんなところで漏らしたら珍事件どころでは済まない。修学旅行で漏らしたやつの末路を知っているだろうか。俺はそうはなりたくなかった。
だから絶対嘘をついているとしか思えない看板にだって従って、とにかく突き進んだ。それしか手がかりがない以上そうするほかない。
そして、俺はついにたどり着いたのだった。
お風呂と大きく書かれた場所に。
そして目を凝らしてみればやっと見えるような字で「兼トイレ」と書かれている場所に。
仮にも食事中に読んでいる方スイマセン。あまり汚く描写したつもりはないので許してください。
コッテコテのハーレムラッキーエッチ漫画にありそうな展開ですが、はてさてどうなるのか?




