80 宿の秘密
「そう、葵ちゃんと一緒。魔法石よ」
「まぁ私の魔法は葵ちゃんのとは、って言うか他のよくある攻撃型の魔法石は違ってアジリティ型って言ってね、要は自分のステータスを高い状態でキープすることが出来る魔法なの。だから、私の姿っていうのは永遠に私の能力値が一番高かった20代前半くらいでキープされているのよ」
それを聞くと葵は目を輝かせながらその石に興味を示してた。
「じゃあ、これを持っていれば永遠に若いピチピチの姿を保てるんですか⁉」
「まぁ別に不老不死の魔法ってわけじゃないから永遠って言うよりも死ぬまで、だけどね」
「それ、すごく良くないですか」
「でも、葵ちゃんは既に自分の魔法石を契約しちゃっているから無理だね」
「あ……」
え? 葵さん? 何でそんな露骨に残念そうな顔をして自分の石を眺めているんですか。あんだけ苦労して取りに行ったんだから自信と誇りを持ってよ。
「でも、葵ちゃんにこの石はどっちみち使いこなせないわよ。この石は自分の力が最大の時の姿と能力を留めておくものだから、まだまだ成長の余地がある葵ちゃんが持ったところで反応しないと思うし」
「そ、そうですよね」
葵は陽子さんに励まされたことで少しは自分の石でも良かったと思えたらしく、やっと前を向いてくれた。
「さて、ここで立ち話をしていてもなんだからとりあえず宿に向かおっか」
そこから先の旅は楽だった。陽子さんが道案内をしながら様々な話を振ってくれたおかげで会話が途切れることなく目的地にたどり着いた。
「いや~やっぱり生で見るとさらに迫力ありますね」
そこにはざっと見で10階くらいまである、リゾートホテルのような建物があった。穢れの無い真っ白な外壁におしゃれな見た目の窓がそこかしこに見える。
「あ、あの……圭君。あと、葵ちゃん。実はねそこじゃないの。こっち」
だがただ一人、その壮大な建物を前にして申し訳なさそうにしながら立っている人がいた。その人は肩をすくめながらある方角を指さす。
ホテルのような建物とは違う方向を指すその指の先には――――ものすごくおんぼろな民宿と呼べるような呼べないような建物があった。
一言で表すなら江戸時代からタイムスリップしてしまったボロ屋とでも言えばいいだろうか。屋根の上は乗れば一発で崩落するのではないかと思わせるほど老朽しており、見た目全体的にも黒ずんでいる。というか目を凝らすとそうでは無く、建物が全部(腐っているのではないかと思う)木で出来ている。
「えっと……俺たちが泊まるのはこの大きな建物じゃなくて」
どうしても信じることが出来ず、何かの聞き間違い、見間違いなのではないかという微かな希望を信じて聞いてみたけど。
「ゴメン。こっち……」
何も変わらなかった。
実は校長は一度たりとも例の大きな建物を宿泊地とは言ってないんですよ。
もし気になったら振り返ってみてください。




