79 神崎陽子
出てきた全員が黒子のような真っ黒な格好をしており、サバイバルナイフのような小型のナイフを手にしている。それに加えて、木の上から弓で俺たちを狙う者たちもいた。
さすがに8対2という不利な状況であるがここで逃げれるとも思わない。俺はメラメラと燃え盛るフレイムソードを構え、葵は魔法を発動する準備をしていた。
「おやめなさい!」
だが、その声が森に轟や否やすべての黒服の男たちが一瞬にして視界から消えた。
「え?」
さすがに俺も葵も動揺が隠せない。そして、その声の主は森の奥、俺たちの目指すべき建物のある方角から現れた。
若くてきれいな女性。だが、幼さは無く、どちらかと言えば大人の魅力というのを大いに醸し出しているお姉さん的な女性だ。
「まさか私の隠密隊に勘ずくとはね。試すような真似をしてゴメンね」
その女性は軽く手を合わせ、ウインクをしながら謝ってきた。ていうかそれを『謝ってきた』と表現していいのかすら分からないほど軽い。
「まぁさすが星羅が推薦するだけのことはあるわね」
「星羅?」と俺が聞き返そうとしたところにそれを察したのか葵が耳打ちで「校長の事よ」と教えてくれる。
「あなた達が風川圭君と川上葵ちゃんで間違いないよね」
俺たちは「ハイ」と答え頷いた。
「うん。私は神崎陽子。これから一週間あなた達の面倒を見るからよろしくね」
「お願いします」
俺は普通に返したが、葵は何か気になるようなスッキリしない表情を見せていた。
「あの……神崎ってもしかして校長のお姉さんとかですか?」
その一言に陽子さんの表情が緩んだ。
「さすが葵ちゃんは勘がいいわね。神崎星羅は私の家族よ。まぁ妹では無くて娘なんだけどね」
「娘⁉ ですか?」
もはや俺は校長の名前も知らなかったがゆえ話についていくだけでも一苦労だった。とてもじゃないが会話に入れない。とはいえ、この見た目で母って……。
「もしかして法外結婚かなんかですか?」
「し、失礼ね! 圭君は剣術とかよりも先にデリカシーってものを教えたほうがいいのかしら」
なんでだよ! なんで思ったこと言っただけでデリカシーが無いって言われなきゃいけないんだよ。てかこの女、校長と大して歳も変わらなそうだし。
「私が若く見えるのはこれが原因よ」
彼女は胸元から一つのアメジストのような紫色に輝く石を取り出した。
「もしかしてそれって」
俺が聞くと陽子さんは頷く。
「そう、葵ちゃんと一緒。魔法石よ」
明るくて陽気な陽子さん。これからもよろしくお願いします。
次回にはきっと宿泊地までたどり着くことでしょう




