77 レッツスカイダイビング
俺たちの特別待遇林間学校はそれから間もなく始まった。
流石私立というべきかなんとその林間学校を行う場所までは電車でもなく、バスでもなく校長の自家用ヘリで送ってもらえることに。
ってかそれならもっと他に金の使い道があるのではないかと思ってしまうが……。
だが、そんなビップ待遇もほどなくして地獄へと変化する。
何とあろうことか同席していた校長がいきなりヘリコプターの扉を開け、俺たちを突き飛ばしたのだ。
当然ヘリは上空ウン千メートルという場所を飛んでいるのであって、それにも関わらずだ。
やっぱりここの校長は頭のおかしい奴だった。
そうは嘆いてもどうにもならない。俺も葵も真下に広がる森林に向かって垂直的に落下していく。その速さはみるみる上がっていき、とても普通に生活しているだけでは体感することの出来ないスピードを肌にビンビンに感じていた。
いや、感じているなんて生ぬるいものではない。それが恐怖となって押し付けられているのだ。
「死ぬ死ぬ死ぬ。やばいってマジで死ぬ!」
そう叫んでみるものの、落下に伴う轟音でどこの誰にも、隣にいる葵にさえ俺が何を言っているのか伝わらない。
だが、そんな中でもはっきりと明瞭な声が俺の耳に響いてきた。
「ほら後ろから伸びている紐を引っ張って」
そのあまりにもはっきりしている校長の声に違和感を覚え耳を触るとそこにはイヤフォンがあった。
確か、「ヘリでは何が起こるか分からないから連絡が取れるようにこれを付けておいて」と言われて校長から渡されたイヤフォンだ。ただ、これで連絡を取れるという事は校長は最初からこれをする気だったという事になる。
「あのクソばばぁ許すまじ」
言葉遣いが悪いとか言ってらんない。こちとら死にかけてんだから!
だが、校長の指示通り、後ろから前方に伸びている紐を引っ張ると俺の落下スピードは一気に落ちた。
隣を見れば葵も同じように速度を減速している。
そしてその上には大きなパラシュートが広がっていた。つまり俺も葵と同じようにパラシュートのおかげで安定を保てているのだろう。
「どう、キレイな眺めでしょ」
まるでデートの最後に夜景を眺めるかのようなテンションで校長は言う。
しつこいようだがもう一度言う。俺たちは今まさに死にかけていたという事を忘れないでほしい。
「そこから湖の見える方を見てごらん。そっち側にひときわ大きな建物が見えるでしょ。だから君たちはそっちの方角を目指して歩いていればいつか宿にはたどり着くから。幸運を祈っているよ。グッドラック」
そう言って通信は切れた。しかもこのイヤフォン本当にイヤフォンの機能しか備わっておらず、マイクが無い。
「クソ! ふざけんな。俺たちを何だと思ってんだよ‼」
そんな怒りはどこにもぶつかることなく今の自分たちのようにフワフワと空中を漂うだけだった。
高所恐怖症なのでバンジージャンプとスカイダイビングだけはしたくありません。




