75 魔剣vs魔法石 4
圭の声に二人ともが茂みへと視線を向けた。
守の剣は葵のすぐ上で迫っていたが、彼はそこで止め、自分の方に引き寄せる。
「何だね圭君。君は僕たちの戦いを邪魔したいのかい? まぁそうだよね。自分のパートナーが今にも奪われそうとなったら止めに入るのも普通の事か」
「別に止めに入ったわけではない。ただパートナーとして葵を応援しているだけだ。
なぁ葵。お前はこの戦いで決別をするって言ってたよな。その言葉に嘘は無いって信じていいんだよな」
だが、葵は重力に押しつぶされているからか何の反応も無かった。
「だったらお前はどうして今、そこで頭下げて俯き、目を閉じてるんだよ。まさか諦めたとか言わないよな! まぁこの戦いは葵の個人的なことだから、とやかく言うのも変なことかもしれないけど、そんな風に諦めてたら奇跡なんて起きるものも起きないぞ!」
「はぁ君は一体何を言っているんだ。奇跡だなんだって。これは一対一の実力勝負。そして実力が圧倒的上である俺をこのごみクズ女が殺せるわけないんだよ!」
「んなもんはやってみなきゃ分からないだろ」
もはや葵そっちのけで守も俺の言葉に言葉で全力の反撃をしてきた。
「ハハハ。やってみなきゃ? 君はそこで何を見ていたんだ。それは今まさに証明して見せただろ。圧倒的な実力をもってして俺は勝利した。この戦いこそが俺の強さの証明であり、葵の弱さの証明だ!」
「バカじゃないの」
だが、その瞬間、守の背後から声が響く。葵だ。
「何が守君の強さよ。何が私の弱さよ。とどめを刺さずに部外者の人間の挑発に乗ってしまうような奴が私に勝てるわけないでしょ」
その言葉に守が反応した時にはすでに時遅しだった。
「でも、私が弱いのは間違いないか。守君と決別するために戦ってたつもりが、絶対に負けないって思って戦っていたつもりが、もう無理かもって少しでも思ってしまった時点で私の負けよね」
そう言いながら葵は己のレイピアで守を貫いた。彼の胸部を刃先が突き抜ける。
「うはぁっ……」
彼の口からはマーライオンが水を吹き出すかのように一瞬勢いよく血を吐き捨て、そして口を覆った。
「葵ちゃん……。それはいくら何でも……卑怯……じゃないか…………?」
「何が卑怯よ。集中力を切らしたあんたの負けよ」
そしてそれからは何も言うことなく守はその場に倒れた。葵は彼から剣を引き抜き、血振りをしたのち鞘にしまうのだった。
*
「校長。川上葵と桐生守の戦いに決着がついたようです」
「ほう」
学校の二階。校長室。そこには校長と新井先生の姿があった。
「で、結果は?」
「はい。川上葵の方が勝利したと」
「つまり、桐生守でもあの二人を仕留めることは出来なかったと」
「はい」
そこまで聞くと、校長は読んでいた本をパタリと閉じる。
「あの子には少し期待してたのにね。ライフポイントを削る事すら出来ないとは」
「どうなさいますか校長。このままだと……」
「大丈夫次の手は既に打ってあるわ」
校長は新井先生に見せつけるようにして一枚のハガキをひらひらとなびかせた。
これでバリアーズ編終了です。少しは葵の気持ちに寄り添ってもらうことは出来たでしょうか。彼女は彼女なりの正義と想いをもってこの学校に入り、剣を振るっているようで。
次回からはまた違ったイベントを楽しむことになるかと思います。




