73 魔剣vs魔法石 2
葵を囲むようにして舞い上がった吹雪は半径数センチを巻き込んで冷却を始めた。それは遠くにいた俺にも分かるくらい周りの気候を変えていったのだ。
夏前なのにクソ寒い。
だが、それでも守を捉えきる事は出来なかった。
間一髪のところで後ろにのけぞったようで被害を彼の左靴のみにとどめていたのだ。
とっさに靴を脱ぎ棄ててまでその場を離れた彼の判断力には敵ながらあっぱれというしかなかった。あいつを褒めるのはだいぶ癪だけど……。
「ふふ。フハハハハハハハ。いやーびっくりしたびっくりした。まさか葵ちゃんが魔法を使えるとはね」
そう言いながらも彼の口調は驚いているというよりもバカにしているという感じだった。
「私だって、ただ、ぼうっと生きていたわけじゃないんだから」
「ハハハ。そうみたいだね。でもそういう奇襲は一発で当てないと意味ないんだよ」
守は態勢を立て直し再び剣を構えた。
「一度見せてしまったものはそう易々と使えない。だろ」
だが、スピードで勝る葵は彼が言葉を紡いでいる間にも、次の攻撃へと移っていた。
「むしろ、一回使ったことで隠す必要もなくなったから使い放題になったんだけどね。彼の者を凍てつくせ冷凍銃」
やっぱり名前がダサいことはともかく、彼女の指先から放たれた氷の魔法はまるで竜のように躍動しながら、守へと向かっていった。
だが、距離があり過ぎる。守は己の剣を盾にし、さらに魔法を発動させることで凍り付くことさえ防いだ。
彼の剣に当たった氷の魔法は、ことごとく弾かれ守の背後へと受け流される。
「だから言ったんだよ。葵ちゃんは甘――――」
「自分の剣で視界奪っているうちに間合いを詰められてるポンコツに言われたくない!」
そう、彼女は冷凍銃を放った瞬間に走り出し、守が剣で魔法を防いでいるうちに一気に距離を詰めたのだ。
「魔法を噛ませで使ったって事か」
葵はそのまま己の剣を地面と平行に構え、そこから剣道の突きのように守に剣を突きつける。葵お得意の三連突きだ。
それに対して守もさっき魔法を防いだ魔剣でそのまま対応する。三連続で甲高い金属音が校庭中に響かせた。
「ウソ⁉」
「もう、何回言わせる気だよ。葵ちゃんは甘すぎ」
三連突きを防ぎ切った守はそのまま攻撃へと一瞬で移り変わる。そのモーションを葵も見逃しはしなかった。すぐにその場を空中後ろ飛びで離れ、守の剣の間合いから逃れた。
「僕の剣が魔剣『グラジュエイト』だって忘れたわけじゃないよね。いくら距離を取ったって意味が無いんだよ。大嵐」
守の剣は葵に掠ることすらない。だが、彼が剣を振るうとそこから竜巻のような砂の流れが発生し、そのまま葵の腹部に激突。そしてものすごい勢いで彼女を数十メートル後方まで弾き飛ばした。
敵に剣を当てずとも攻撃できる剣って使ってみたいけど、あの剣って血振りなんかをするだけでも竜巻レベルの災害が起こるのでしょうか(笑)




