69 不審者の来校
言わなくても分かると思いますが続きなので葵(小五)視点です
「逃げろ!」
誰かがそう叫んでいました。昼ご飯を食べ終わった後の昼休み。外で遊んでいたのかボールを抱えた人たちが全力で学校の中へと入ってきました。ボール当て鬼か何かでしょうか? でもじゃあ何で逃げる人がボール持ってるの?
それがとんちんかんな推理である事は間もなく分かるのです。
「何があったんだよ」
走る子供の一人に声を掛けたのは守君でした。
「こ、殺されるんだよ。銃を持った奴が……ま、まだ死にたくない」
小学三年生くらいだったのに恐怖にも負けずに私たちに何が起きたのかをしっかり教えてくれました。
その時先生たちにも何が起きているのか伝わったのでしょう。校内放送でより詳細な内容が流れました。
「全校生徒に連絡します。現在校庭にて拳銃を持った不審者が発生。生徒の皆さんは至急教室に戻ってください。繰り返します――――」
と、いう事でした。不審者って……。
その放送を聞いた瞬間私は思いました。
「ねぇ早く教室に帰ろ!」
だが、それを伝えても守君は動きません。いやむしろ昇降口の方に行こうとさえします。
「ちょ、ちょっと。そっちは教室じゃないよ! そっちは不審者だよ。ねぇ守君ってば」
「うっせーな。俺たちはバリアーズなんだろ。生徒の危機に俺たちが動かないでどうするんだよ。不審者の一人や二人にビビってたら警官なんてなれないんだよ」
「で、でも……銃を持ってるって。殺されちゃうって」
「じゃあ葵は教室に帰ってればいいじゃん。俺一人で行くからさ」
「い~や~だ。守君にだって死んでほしくない。ここは先生に任せて教室に戻ろうよ」
私は守君の腕をつかみ必死に訴えました。さすがの私でも箒と塵取りで銃に勝てるとは思いません。
「離せ! 早く行かねぇと犯人がいなくなっちゃうだろ」
「いいじゃん! それでいいじゃん‼ 犯人がいなくなったらそれで解決じゃん」
「違うんだよ。警官は犯人を捕まえてなんぼなんだよ。逃げもしなければ逃がしもしない」
「バカ! 守君のバカ! もっとちゃんと考えなさいよ!」
その時私は感情的になって彼の手をつい離してしまったのです。
「葵は安全なところにいろ」
「あっ」
そう思った時、すでに守君は昇降口の方に走り出していました。
「本当に守君のバカ」
なんて独り言を言っている場合ではありません。小学五年生が銃を持った大人に勝てるわけないんです。
急いで止めなくては。
私が彼を追いかけて一歩踏み出した時、初めて耳にするような轟音を聞きました。
それが何なのか私は後から知るのでした――――銃声というものなのだと。
正義と安全、どっちを取るかって難しいですよね。特に正義感の強い人だと。
でも銃を持った不審者がやって来て立ち向かえる小学生はそうそういないと思います。




