67 葵・小学五年生
あの後朝のホームルームが始まったこともあり、守は教室から帰っていった。
俺は俺で朝のホームルーム中、椅子と机が散らかっている件に関して理不尽にも怒られたのち、彼の情報を探るために葵に話を聞きに行く。
「で、あの守ってやつは誰?」
後から思えば浮気を探る彼氏みたいなきつい口調になっていたかもしれない。葵の方もかなり答えにくそうにしながら言葉を紡いでいた。
「…………簡単に言えば小学生の頃の友達。でももう少し詳しく話すとなると長くなるけど……」
それでも構わなかった。相手は俺から葵を取ろうとしている人間。そして、俺よりも葵のことを幸せにできると豪語した人間だ。そんな奴に俺は負けたくなかった。そして負けないために今必要なことは敵を知ることだと思う。
「分かった。じゃあ話すね」
*
これは五年前。私が小学五年生だった時の話。
私は四年生の頃から気になっていた桐生守君と同じクラスになる事が出来た。
それが嬉しくて、そして「今がアプローチのしどきだ」って神様に言われているような気がして私は彼に対して色々話しかけた。
「ねぇねぇ守君の好きな食べ物ってな~に?」
「ねぇねぇ守君って休日何してるの?」
「ねぇねぇ守君ってスポーツとか好き?」
「ねぇねぇ守君って将来何になりたいの?」
「うっせー!」
守君が反応してくれたのは、初めて声を掛けてから二週間くらい経った頃だったでしょうか。それはそれは激しい剣幕で私のことを見つめているではないですか。
果たして何がいけなかったのでしょうか? 色々声を掛けたこと? 教室か廊下から体育館までなりふり構わず声を掛けたこと? 下校中に男子たちの中に入っていきなり声を掛けたこと?
私にはさっぱり分かりませんでした。だから私は聞いたのです。
「何で怒ってんの?」
するとものすごい口調で彼は返してくれました。
「何でって分かんだろ普通。お前いつまで俺の後を追ってくる気だよ! ストーカーかよ。周りの男たちからも、お前と付き合ってんの? とか噂されてめっちゃ嫌なんですけど!」
「何で何で? 私たちが付き合ってるって噂されるとどうして嫌なの?」
「どうしてって、付き合ってもないのに『付き合ってる付き合ってる』って茶化されるのは嫌だろ。お前は嫌じゃないのかよ」
「嫌じゃないよ。別にいいじゃん。言いたい人には言わせておけば。自分たちがそうだと思えば付き合ってるし、そうじゃないって思えば付き合ってないでしょ。違う?」
当たり前のことを確認するように問いかけると彼は困った顔をしてこう言うのです。
「普通はお前くらい割り切れねぇよ」
え? 私は何を割っているのでしょうか? 割ると言ったらスイカでしょうか?
葵ちゃんって純粋な子の設定って書いてはいるんですけど小五だとここまで純粋なんですね(笑)
USBが無いと自由度が広くて自分でもここまで純粋な子だとは思っていませんでした。
こっからしばらくは葵視点というか小学校五年生の葵の心情に寄り添いながらお送りします。




