66 パートナーを掛けた戦い
『いや、葵ちゃんを俺によこせ』
その一言でクラス中の動揺を呼び込んだのは間違いなかった。自分でいうのもあれだが、このクラス内において俺と葵はパートナーという認識で確立されていた。それにゆえに小雪たちのように仲良くなろうとするものはいても、俺たち二人の間に割って入ろうとする人間はいなかった。
――今の今までは。その均衡が破られたのだからざわつくのも無理が無い。
「よこせってどういう事だよ」
「どうもこうもさっき言った通りだよ。君なんかよりも僕の方が葵ちゃんの事を幸せにして見せる。だから葵ちゃんには僕のもとに来てもらう」
「そんなふざけた理論が通るわけないだろ。どこにお前が俺よりも葵のことを幸せにしてやれる要素があるんだよ」
だが、そう返されるのが想定内と言わんばかりに守は冷静に何のためらいも無く一言で返してきた。
『強さだ』
「強さが無ければ人は守れない。君と葵ちゃんが一緒にいると、葵ちゃんも一緒に戦わなくてはならないからそれだけ命の危険を冒すことになる。対して僕なら葵ちゃんは後ろでゆっくりティータイムをしていてくれても守り通せる自信があるけどね」
「そんなの自信だけだろ」
余裕な表情を見せる守に対して生き恥をさらすように必死に抵抗している自分が嫌になっていた。
けれど、それでもなりふり構っていられない。そんな板挟みな思いがさらに俺を追い込んでいく。
「ならいいよ。本当に葵がどっちにふさわしいのかは剣で決着を付けようじゃないか。放課後、校庭で」
「あぁ望む――――」
「待って!」
そこに待ったをかけたのは渦中のお姫様だった。
「その勝負私にやらせて。私が守君と戦う」
「で、でも……」
でも、この勝負は一人の女の子を掛けた男と男一対一の真剣勝負だ。それを葵が引き受けるというのは。
「さっきも言った通り守君との件は全部私の問題なの。だから……」
その葵の言葉に対して守は心底どうでもいい声音で「別に僕はどっちでもいいけど」とつぶやいた。
そして、それに加えて「でも、葵ちゃんが戦ったて負けたら葵ちゃんは僕のものだからね」とも。
「そんな! 俺が戦ったわけでも無い――――」
「それで構わない」
おい! 葵。自分の命勝手に投げ出すな。お前今にも負けそうやん!
だが、さっきも見たあの眼差しで「私を信じて」と言われると、俺にはどうすることも出来なかった。
こうして、俺が祈る事しか出来ない中、自分のパートナーを掛けた戦いが始まろうとしていた。
少女漫画的展開ですけど、圭君視点何で誰得だって感じです(笑)
ちなみに豆知識として、守君は冷静な状態での一人称・二人称は「僕・君」なのに対して興奮状態のときは「俺・お前」になります




