64 守
「おい、風川。良かった。いい所に来てくれた。急いで教室まで来てくれ」
登校早々昇降口まで迎えに来てくれたのは小雪だった。だが、息を切らしながら目を吊り上げてこちらを見つめる彼女は、普通とはだいぶ異なっている。とてもじゃないが友達として普通に迎えに来たという雰囲気ではない。そもそも小雪はそんなことしなそうだしな。
「どうしたんだよ。そんなに血相を変えて」
「け、血相は変えてない! と、とにかく急いで教室に来てくれ」
それだけを言い残し小雪は教室の方へと走っていった。葵なら俺の腕をつかんで強引に引きずりながら連れて行ってくれたのだろうが小雪はそうでは無い。
まぁここで小雪ひとりに走らせてもしょうがないし、どのみち教室に向かおうとしていたのだから俺も小雪に合わせて小走りで教室まで行くと、そこには信じられないような光景が広がっていた。
机は前の方に不揃いに寄せられ、椅子は四方八方に。前に置かれている黒板には葵vs守の文字があった。
で、机が前に寄せられたことによってできたスペースでは葵が魔法ではなく、剣で戦っていた。その剣先にいるのが見知らぬ一人の男。
男子の中では長めに部類される肩元まで、髪を伸ばしていた。スミレの花のように濃い紫の髪を。身長はさして俺と変わらないものの、腰の括れはモデル女子を思わせるかのように細く、葵の剣を己の剣ではじくのではなく、避けることで躱す。
まぁ間違いなく良好な関係には見えない。
一通り葵の攻撃を躱しきった守という青年は、そのままマジックを見せるかのように瞬間移動をし葵との距離を詰めて剣ではじく。当然と言ってはあれだが、葵がその速さについていけることも無い。
それはそれは盛大に、掃除用具入れに重たい音を立てながら衝突した。
「くそ」
応援出来るなら葵の助太刀をしたかったけれど、二人の醸し出す雰囲気がそれを許さなかった。
「やってくれるじゃない」
「やるも何も期待外れなんだけど。葵ちゃん」
「好きなだけ言っておきなさい!」
再び葵は立ち上がり剣を刺し向ける。
「だから、そんな単調な攻撃。当たらない」
が、その剣もくるりと回転することで受け流し今度は掃除用具入れとは反対側の廊下側の窓にたたきつけた。
「ぐはぁ……」
自分の攻撃の勢いと相まって、衝突した時の衝撃はさっきの二倍以上だろう。
「ねぇどうする? 死んじゃう? 弱い葵ちゃんはここで一回死んじゃう? そうすれば生まれ変わって強くなれるかもしんないね」
守と呼ばれる人物は剣を携えたまま、一歩一歩ゆっくり葵に向かって歩き始めていた。
さすがにもう見てられない。見てるだけではいられない。
俺は自分の腰に刺さる剣を引き――――
「待って! 圭君。ごめんこれは私の戦いだから。圭君には関係ないし巻き込みたくもない」
だが、葵はそれでも立ち上がって俺を制止する。
「大丈夫」
そういう彼女の瞳には初めて見る炎が宿っていた。
何が始まったかよく分からないですよね(笑)
一応葵の過去編っぽいものです。




