59 キス
毎度毎度の続きからです。
「えっと……葵さん? いいのか。キスだよ。いいの……」
焦る俺に対して葵は冷静だった。
「でも、それをしなければ、魔物に追い掛け回され、ビル三回分くらいから落下し、岩に追い掛け回され、甲冑に追い掛け回されたこれまでが無駄になるわけでしょ。逆にキスなんて何の命の危機も無いんだからそんくらいやってのけるわよ」
確かに。確かにそうだ。ここで引き下がったら何のために命を掛けてここまで来たのか分からない。
「それに、魔宝石がほしいって言ったのも私だしね。――――それとも圭君は私と、その……キスをするのは嫌?」
「いや、俺は葵がそれでいいなら……」
「は~い決定ね。待ってました待ってましたよ! じゃあじゃあ早速、二人ともその台に上って」
俺たちの何とも言いがたいムードをぶち壊すかのように、ただ一人陽気に女神様は、はしゃいでいた。
でもまぁ俺もこのラッキーには感謝すべきか。こんな形とはいえ、葵とキスできるとは。そりゃ、葵が嫌がっているのにするのは嫌だったからさっきは否定的な立ち回りをしたけど、本音を言えばしたいし。俺だってキスしたいし。
もうこの際、欲望が女神様にダダ漏れだろうがなんだろうがどうでもよかった。だって頭の中が『葵とキスできる』って思いで満たされてしまっているんだもん。
「さぁさぁ二人とも上って、準備完了だね。ハイじゃあ向かい合って」
女神様に促されるまま、俺たちは向き合う。そんな葵は頬を紅潮させ照れ隠しをするように少し目線をはずしていた。
え、待って。ヤベー。葵さん今までそんな表情一度も見せたこと無いでしょ。めちゃくちゃ可愛いんだけど。どうすんだよこれ。
胸のドキドキ、聞こえてないよね。男の癖してこんな所でドキドキしてるとか末代までの恥やで。
ゴメンよ。子どもと孫とそれに続く子達よ。
「な~に二人とも顔を赤くして目をそらしあってるのよ。ちゃんと見つめなさい。じゃないと扉開けないわよ」
そ、そんなこと言われても……。だが、葵はがんばって俺のほうに目線を合わせた。メッチャ瞳を輝かせて、さらに顔をゆでダコの様に赤らめて。その期待に俺が応えないわけには行かない。
「け、圭君」
そんな中、葵は女神様にも聞こえないように俺に顔を近づけ、小声で呟いてきた。
「私、これ、初めてだから……その、何ていうか、やさしくしてね。全然こういうの慣れてなくて……」
「しねぇーよ。俺だって初めてだし。てかこんな場面でディープキスとか普通しねぇって」
葵は軽くうなずいて瞳を閉じた。 それに俺も覚悟を決める。
「♡」
当たった。すごくやわらかい。なんか不思議な感覚だった。本当はふと一瞬唇を当てて離すつもりだったけど、離したくなかった。もちろん舌を伸ばす気は無い。でも、でももうちょっとだけ、しっかりと唇をかせね合わせたい。
「♡♡」
葵は抵抗しない。俺を受け入れてくれた。そしてそれと引き換えるように彼女の吐息が俺に伝わってくる。声にはなっていないが呼吸となって……。
人間の唇ってこんなにも温かくて、やわらかいんだ。俺はさらに彼女の心が欲しくなってしまった。
はい、死ねー。リア充死ねー。とりあえず遺跡ごと二人で爆発してこーい。
どんなラッキーパンチでも許されないからね! お前ら一体何秒キスしてんだよ‼
って書いている私が言ってはダメですよね(笑) でも言わせてください。だって当初の予定ではこんな長々キスする予定無かったんですよ(クソUSBさえ無くならなければ)
なんだかんだいって登場人物のことは好きですけど、今度絶対報復してやろうと思います。




