58 扉を開けるには
「で、そろそろ降りてきていただいて、魔法石についての話をしてほしいんですけど」
一向に話が前に進まない駄女――女神様に、お願いしてみた。
「誰が下界なんかにおりますか。私は神聖なる女神様よ。そう易々と下界に降りて人の子に姿をさらすわけにはいかないの。でもまぁ魔法石のありかについてはあそこよ」
と女神様は言った。もう少ししっかり言うと『実体のない女神様』は言った。
これが一体どういう事か分かるだろうか。
実体のない女神さまが『あそこ』などという「こそあど言葉」を使っても一体何をさしているのかさっぱり分からないのだ。もうちょっと頭を使ってほしいところだよ駄女神。
「魔法石のありか、教えないわよ」
「スイマセン」
「まぁ分かればいいのよ分かれば。魔法石はあそこの金ぴかに光っている扉の中にあるわ。でも、あの扉を開くには一つだけ条件があるの」
「条件?」
俺が聞き返すと女神様はそのまま続けた。
「そう、条件。とはいっても簡単な条件よ。そこの扉の前に台が置いてあるのは分かる?」
確かに金ぴかに光る扉の前に朝礼台のような台がいつの間にか置いてある。この部屋に入ってきたときには無かったはずなのに一体どんなマジックなのだろうか。
「で、その台に上ってもらってキスをする。それだけよ」
「な~んだそんだけでいいんですか…………って! 今なんて‼」
一瞬は納得しかけた俺だったがとっさに納得してはいけない気がした。この駄女神今なんて言いやがった?
「キスよキス。出来なくないでしょ。あんたたちカップルみたいだし」
「だ、誰がカップルだよ!」
「あら、カップルじゃないの? 仲のいい男女だからてっきりカップルかと。でも、まぁ男女なんだし仲よさそうだから大丈夫でしょ。この間なんて男同士できたやつがいて、結局キスせずに泣いて帰っちゃったり、その前はキモオタ男子二人組が……あれは見るに堪えなかった。BLとは程遠い世界があったね。
あ、でもでもその前の兄弟はお兄ちゃんと妹って組み合わせだったけど何の抵抗も無くキスしてたね。やっぱあんだけ仲いいといいよね~。
で、あんたたちはどうする? ここでキスをして魔法石を取るか、それとも帰るか」
「そ、そんなの……」
俺が葵とキスする⁉ そんなことがあっていいのだろうか? 葵は卒業するために協力体制にあるパートナーであり恋人ではない。そんな俺とキスをするなんて葵が嫌だろう。
そう思い葵の方を見ると彼女は顔を真っ赤にしていた。
ヤベー、めっちゃ怒ってますよ。女神さん。どうせ聞こえてるんでしょ。葵がめっちゃ怒ってますよ~。
「で、どうする?」
うわ~無視ったよ。駄女神どうせ聞こえてるくせに無視りやがったよ。
「うっさいわね! あんたに聞いてないの‼ そこの女の子に、葵ちゃんに聞いてるのよ。やるの。それとも帰るの」
葵は顔を赤くしたままプルプルしていた。しょうがない。俺が代わりに答えてやろう。
「そんなの――――」
だが、俺の声は葵の声にかぶさり、空気にもならずに消えていった。
「やります!」
なぜなら葵の一言が衝撃的過ぎたから……
どうでもいいかもしれませんがなろうのホーム画面変わってましたね。びっくりしました。
以上です。
次回 キス




