48 大草原
俺たちは大草原を駆けていた。それはそれはサハラ砂漠を緑で埋め尽くせばこんな感じのかなともいえるくらい何の障害物もなく水平線に緑が広がる場所を走り抜けていた。
ただ走り抜けるだけならいい。女の子と「ランランルンルン♪」言いながら走れるならどれだけよかったことか。
まぁそんな考えが浮かぶということは、ご察しの通り楽しくなんて走っておりません。
もはや生死を駆けて超全力ダッシュでございます。
俺たちの後方何メートルだろうか? 一キロくらいは離れていると信じたかったが、微妙なところだ。
そしてその後方一キロくらいには、ライオンとシマウマを足して二で割った様なバケモンがこちらに向かって突き進んでいた。
上半身はライオン。こちらに向けて半開きになっている口からは、食われれば一発で肉を噛み切られそうな牙が。そして狙ったら逃がさないという心意気がヒシヒシと伝わってくる咆哮。目までははっきり分からないがきっと鋭い目つきをしていることだろう。
そして下半身がシマウマ。普通のライオンでも相当早いのに本能的にそのライオンから逃げるだけの速さを持ち合わせたその足は、普通のライオンでは考えられない身軽さで俺たちに迫ってくる。
そして何より最悪なのがこの地形である。俺は葵に『魔法石を探してほしい』と言われた時はそれこそファンタジー作品で出てくるダンジョンのような階層内で迷子になる可能性を想定していたってのに、まさかその入り口さえ見つけられずに命の危機に瀕するとは。
そもそもそれっぽい建物がどこにもない。無いんだよ。一面の緑。もう地球温暖化これで救えるんじゃねぇーかってくらい草であふれてる。そのくせして木も遺跡も人工物も無いんだから。
ゆえに隠れてやり過ごすということが出来ずただただ、逃げるしかなかった。
「と、とりあえず葵! 何でもいいから隠れられる場所を探せ!」
「言われなくてもやってるわよ~。やってるけど無いじゃん!」
そんな不毛な言い合いをしながら逃げまくっていた。
もちろんあの珍獣を待ち構えて切る事は出来ないのかと考える人もいるだろう。だが、よく考えてみろ。今ここで俺があの剣を引き抜けばどうなる事か。足元に広がる草々に引火し一瞬で立っていられなくなる。
つまり己の剣で大災害レベルの火災を起こし、自害することになる。
じゃあもう一つの普通の剣ならどうだろうか? 無理だよ無理! あんな奴を自分の剣が届く範囲内までまって一撃で仕留められなかったら……。
つまり俺たちに残された道はやっぱり全力で逃げる。それしかなかったのだ。
次回くらいにはきっと遺跡にもたどり着けるだろう。たどり着けるはずだ。たどり着ける……よね。




