45 リバーブル (咲視点)
今回は咲視点です。
気を付けてください。
気が付いた時には、誰もこの校庭に立ってはいなかった。亜紀も圭様も屍食鬼たちも。
わたくしと謎のコートを羽織った人物を除いては。
その謎の人物は持っているナイフを軽く投げてみたり、先を触ったりしながら弄ぶ。目元はフードを深くかぶっていて全く見ることはできないし、表情も陰になっていて感じることが出来ない。
唯一ストッキングを履いていることからおそらく女性だろうと推測するのが限界だった。
「さて、桐原さん。これでこの場に立つのは私とあなただけになりましたね。いかがしますか? 私と一対一で戦いますか?」
謎の人物はいまだにナイフを掌の上で躍らせながら問いかけた。わたくしがライフルを使っているがゆえに不意打ちをされるなんて一切心配していないようだ。
「わたくしの名前を知っていらしたのですわね。でもわたくしはあなたのことを知りませんわ。せめて勝負するにしても名乗っていただけませんこと」
「それは失敬。私ごとき名乗るほどの者でもございませんが桐原さんがそこまでとおっしゃるのならば。――リバーブル、そう覚えていただけるといいかと」
「リバーブル?」
「えぇ」
明らかに本名ではない名前だったがそこに聞き覚えは無い。立場の関係上色々な人と出会ってはいるがその中の一人だろうか? いや、そうでなければわたくしの名前を知っているとは思えない。
「で、いかがしますか? わたくしと勝負しますか」
「そりゃ――――」
そこまで言ったところでわたくしの理性が急に働き始めた。
『もしここで自分が負けてしまった場合ここで転がっているみんなはどうなってしまうのか』と。
幸いにして屍食鬼に食われたところでライフポイントが1減るだけで済むということは戦闘中に犠牲になったクラスメイトのおかげで分かった。だが、ライフポイント制度には続きがある。
『保健室で回復することによって命が復活する。そしてそれを5回まで繰り返すことが出来る』
つまり、ライフポイントを一つ減らして復活するには保健室に行かなくてはならない。もしここでわたくしがこのリバーブルという女と戦って負けてしまった場合、亜紀も、圭様も、他のクラスメイトも、そしてわたくし自身も全員がここで野垂れ死ぬという事だ。
「わたくしとしても戦い気持ちが山々ですが、他の仲間の命の方が今は優先ですわ」
「甘いことを。もし、あなたがこの転がる死体たちを運んでいる間に攻撃でもされたら?」
「それは無いと信じていますもの。もしあなたがそのように卑怯な手を使うならもっと早く――――わたくしに話しかけることなんてしないで殺しに来ているんでは無くて?」
するとそれがリバーブルにとって満足のいく答えだったのかニヤリと笑い、
「私がそこまで優しいと勘違いしない方が身のためよ。でもまぁ今日のところはあなたの度胸に免じて消えてあげるわ。せいぜい彼らを看病してやりなさい」
とだけ言い残し、マントを翻したその瞬間にはリバーブルは消えていたのだった。
とりあえずこれで咲ちゃん、亜紀ちゃん編は終了です。トラブルだらけだったのですが何とか終わってよかったです(そのトラブル自体は解決してないのですが……)
それでも次回からは、新章に入っていきます。




