38 放課後 中庭にて
それは放課後の事だった。
プールに行った時の更衣室の件で説教を受けたのち、俺と葵は学校から帰るために中庭を歩いていた。
そこにひらりと一体どこらか降ってきたのか自慢の金髪をなびかせながら咲が現れる。
「圭君とか言いましたわね。あなたにデュエルを申し込みますわ」
芝居じみた感じでビシっと指をまっすぐ俺に向ける。
さらに咲は状況が理解できない俺に対して説明を加えた。
「朝の決着をつけるのにはうってつけだと思うのですが?」
最後に「?」があるもののもはや疑問ではなく確信的に、どちらかと言えば反語のように「思わないわけないよな」という圧を付けた状態で。
この学校にはデュエルという制度がある。普段の学校での殺し合いとは別で、デュエル場と呼ばれる場所で一対一の戦いを行えるという制度である。
デュエルではバトルポイントもライフポイントも変動しない。いわば練習試合のようなものだ。
普段は体育の授業で使うことが多いのだが、本人たちの希望があればいつでも貸してくれる。
「でも、また何でデュエルなんだよ。朝の続きなら二対二の方が」
「二対二は形だけで結局最後はわたくしと圭君の一対一になっていたではありませんか。中途半端に終わってしまったあの戦いにケリを付けますわよ」
それだけを言い残し、彼女は亜紀を連れてそそくさと去っていって行ってしまった。
「圭君一人で大丈夫? おバカさんなんだから心配だよ~」
取り残された俺に対して本当に心配しているような声で葵が聞いてくる。『おバカさんだから心配』は意味わからないが。
「大丈夫だろ。俺だって立派な高校生だ」
「立派ね~どうかしら。女子の試着室勝手に開けたり、女子更衣室に入ってきたりする人のどこが立派なのかしら」
彼女はニタつきながら痛いところを突いてくる。早くどっちも誤解なんだって説明しなくては。
「…………と、とにかく大丈夫だから」
「あのお嬢様おっぱいそこそこ大きかったよ~」
…………コイツ、どこ見てんだよ。
*
その日の夜。桐原家。
「お嬢様、一人でデュエルなど大丈夫でございますか」
唯一咲の部屋に長時間入ることを許されている亜紀が問いかける。
「もちろんですわ。ホント短い時間でしたけどあの方と戦っている時間はなぜだかすごく楽しかったんですもの」
「でも、何もデュエルという形を取らなくても。普通に戦うのであれば、私もお供いたしますのに」
「それじゃダメですの。普通に戦ったのではあの女だって付いて来るだろうし、わたくしのライフルでは他の人を巻き込みかねませんわ。なら、しっかりと囲われているフィールドでバトルできるデュエルの方が都合がいいんですの。それに、あの二人はそこそこ強いですわよ。仮に命を懸けて戦うにしてもそれは今ではありませんもの。あなたにも死んでほしくないですし」
「わ、私は――――」
そこまで言いかけた亜紀は咲の瞳を見ると、まるですべてを悟ったように言葉を引いた。
そして、彼女は自分の主張を曲げ「分かりましたお嬢様」と。だが、最後に「ただ……」と一言付け加え、自分の主を戦場に送り出す覚悟を決めたのだった。
タイトル的に誰かが告白でもしそうな勢いでしたが全くそんな雰囲気ではありませんでした。
次回、朝の決着をつけるべく圭VS咲の一対一の勝負が始まります。




