2 運命って……
「おっはようございま~す!!」
その声のする方に教室中の視線が集まった。それは俺も例外ではない。
ストレートの茶色い髪にクリクリとした大きな瞳。希望に満ち切ったあの表情を忘れるわけが無い。
そんな彼女に対して俺は教室内である事も忘れて「あーお前!」と大きな声を出してしまった。
こうなってしまえばもうロックオンだ。
彼女も視界に俺を捉え、グイグイとこちらに向かって一直線。関わらないでおこうと思っていたのに……。
「君! さっき会ったよね。確か、かずや君? だっけ」
だが、彼女から告げられた名前は俺のものではなかった。
え? 後ろに誰かいるのかな?
最初はそう思い、周りを見渡してみたがそれと思しき人はいない。
まさかな……まさか。たかだか一時間前にあった人の名前を忘れてるとかないもんな。
そう信じてはいたものの、彼女の目がまっすぐ俺を見つめていたがゆえに一応答えてみた。「違う」と。とても小さな声で。
だが、話の流れは俺の想定していた最悪の方向へ進んでいく。
彼女は「あれ~」と言いながら少し思考。そして「じゃあじゃあ、たける君?」だって。
完全俺に声かけてんじゃん‼ てか本当に俺の事を間違って覚えてんじゃん! 二回も連続で間違うなんて。
「違う」
「え~、じゃあ、ひろあき君!」
「誰? それ」
「うぅ~じゃあ、けいくん」
「違……」
いや、あってる。やった! やったよ‼ やっと出てきた。
「あ~そうそう圭君だよ圭君。四番目に声かけた子だ」
だが、彼女の一言はそれだけで俺の高揚感を地の底にまで落とす力があった。
いやまぁ冷静に考えれば何に高揚してたんだよって話だけど……。
「まさかじゃないけど、今まで出てきたのは俺よりも前に声を掛けたやつの名前か?」
「そ、そんなことないよ~」
彼女は白々しく、ならない口笛を鳴らしていた。
確定だ。こいつ、本当に俺の事を欠片も覚えちゃいない。
こっちから関わるのを止めようとはしていたけど、これはこれでちょっと悲しい。
だが、彼女の方はそんな俺の気持ちを汲み取ってくれやしない。
「まぁまぁ~そういう小っちゃいところは気にしないでさ~。朝から声を掛けられた女の子と同じクラスなんて運命感じちゃわない」
「感じません」
それどころか開き直ってしまってこのざまだ。
だが、そんな彼女からさらに信じられない事実を告げられる。
「え~何でよ。じゃ~これならどう? 私たち、隣の席なんだよ~」
「えっ⁉ となり!」
確かに隣の席は余っていた。それなりに人がそろっている中、隣だけは空いていたから一体だれが来てくれるのかなとか期待を少し膨らましていたけれども、え? お前?
彼女の方はなんか知らないけど満面の笑みで隣の席に着いてるし。ホント運命って何なんだろうね。
それからHRが始まった。
なんか知らないけど担任の先生から剣が渡されたが、彼女の件に比べちゃ大したことない。
そして先生は最後にこう告げて教室から出ていったのだ。
「この後は身体測定だから更衣室でジャージに着替えて体育館に集合な」
運命ってホントなんでしょうね。
まぁこんな運命ないんですけどね。
(話が動くまでもう少々お待ちください)




