34 儚い夏休み(前編)
この学校に入学して三ヶ月。季節もすっかり夏になった。そして今は夏休み。こんなふざけた高校にも夏休みはあった。――十日間だけだが…………。
そんな貴重な休みだったのだが、
「あっつ~い。どっか涼しくて楽しいとこ行こ~」
って葵の一言により、俺はそこそこ遠いプールまで連れ回されていた。
人もそれなりにいるし、全然リフレッシュになるという環境とは程遠い。そんな俺の気持ちなんてつゆ知らず、「いいよね圭君は。こ~んなかわいい子に囲まれてプールに来られるなんて」なんて抜かしてやがる。
半ば強制的に連れられたせいか、最初は不満しかなかった。
でもよくよく考えれば確かに葵の言う通りかもしれない。普通に学校生活を送っていれば、同性とばかりつるんでいて女子とプールに来る機会なんてそうそうないだろう。あるとすればよっぽどクラスみんなが仲良くて「みんなでプール行こう」とか言い出すやつがクラスにいる場合くらいだ。
それでも女子が三人。男が一人なんて状況は生まれない。
そもそも、俺は中学時代の実体験として小説やドラマ、アニメなんかとは違い、女子と色々なイベントを起こせることはないということを知っている。どうせ、遊んでも同性の友達だけだ。異性交流なんてそんなの創作物という名の異世界だ。
と、思っていたが今その理論というか考え方が否定されている。
「お前、どこまでついてくるんだ。ここ女子更衣室前だぞ」
そんな初体験ということもあり時々要領が分からなくなる。そりゃだって男たちと来たら途中で分かれるなんて事ないわけだし。
俺は、とりあえずその場から走って逃げ、男子更衣室で着替えを済ました。
だが、想像以上に着替えに時間がかかってしまい、俺がプールについたときには三人とも水着に着替えて待っていた。
「おっそ~い。どんだけ着替えるのに時間がかかるのよ」
胸元とおしり辺りのみを同じような花柄で包み隠している水着に身を包む葵。思わず『その水着サイズ感あってねぇーだろ』とツッコみたくなるほど豊潤な胸が水着から零れ落ちそうになっている。それゆえに目線に困る……。
「ったく。女子を待たせるなんて男子としてどうなんだ」
こっちはまるで普通の服のような水着の小雪。こっちもサイズ感を間違ったのだろうかおへその部分だけ見えてしまっているが、それを除けばその格好で学校に行っても問題ないだろと言えるくらい本当に普通の服のようだった。
「まぁまぁみんな揃ったんだし早く行きましょ」
青というか紺の上下一体になっている水着を着た朱里。胸下に『〇年〇組 内田朱里』とでも書けばどう見てもスク水にしか見えないくらいシンプルで他の二人と違って何の模様もない。
そんな女子三人が俺の前を駆けていく。
それはそれはとても平和な光景だった。
前編とは言え何の起承転結もありませんでした。
まぁ「儚い夏休み」シリーズで起承転結があればいいですか? 許してください。
ちなみによくよく考えると十日間って彼らの夏休みは我々の令和元年のGWと変わらないんですね(笑)




