30 ここで生きること
「あ、葵じゃん。これ、どういう事か説明してくれる?」
飛び蹴りをしてきた少女は、葵のことを認識しているようで俺ではなく彼女に理由の説明を求めた。
だが、葵は葵で状況が理解できていないのかキョトンとした表情を浮かべながら一言。
「圭君? どうしてそっちを開けたの?」
いや、ちょっと待て! 俺が悪いのか?
否。 俺は間違っていない。
俺は見たぞ。彼女がたくさんの服を抱えて『真ん中』の試着室に入っていくところを。
「うん。確かに入ったよ。でも服を掛けるところが一つ壊れてるから隣に変えるねって店中に聞こえるくらいの声で言ったよね?」
聞いてない。というか店中に聞こえるくらい大きな声を出して恥ずかしくないのかこいつは?
「そもそもと言えば、試着室の前で待っててって言ったのに勝手にいなくなった圭君が悪いんでしょ。ごめんね、朱里ちゃん、雪ちゃん」
「え、お前この二人知ってるのか?」
試着室の前からいなくなった件を謝るより先にそう口走っていたが、その言葉に対して葵は「は?」とでも言いたげに口を半開きにしたまま、しばし固まっていた。
「いや、知ってるも何も同じクラスでしょ」
だが、そう言われても俺はこの二人の女の子に思い当たる節は……
「まさか知らないの⁉ 同じクラスの人ぐらい覚えておきなさいよ」
「い、いいだろ。同じクラスっていっても殺しあうために同じ空間にいるだけなんだ――――」
その言葉を最後まで告げることはできなかった。赤く腫れている頬に追撃の一打が飛んできたゆえだ。
「な、なんで叩くんだよ!」
「ほっんとうにバカなの? 確かにこの学校は殺しあうだけの学校かもしれない。でも、学校の目的ってそれだけじゃないでしょ。この学校だって休み時間以外は普通の学校と一緒。だとしたら殺し合いの標的以前に生活を共にする仲間じゃん。
もし本当にクラスが殺し合いだけの空間であって、クラスメートが標的だと思っているなら、それは何の感情もないただの殺人鬼よっ。
例えどんな環境にいたって、人は鬼になってはいけない。鬼になった人はもう私たちのいる世界に戻ってくることなんてできないんだから。
――でもまぁ、この学校の環境ではみんな殺人鬼にならない、とも言いきれない。
それでも、それでも! 圭君にはそうならないでほしい‼」
俺は葵が泣いているのをはじめて見た。これだけ必死に俺に向かって語りかけてくれる葵のことも。
そして言っていることも理解できる。由美ちゃんが斬られてから、俺もどうかしてたのかもしれない。
前を向いて明るく進むことが必要。分かっていたはずだけどクラスの人から――いや、他の人すべてから、ただ目を背けていただけだったのかもしれない。
勉強という逃げ口を使って。
実は三十話ということで、これで無事一カ月間毎日投稿を続けることが出来ました!!!
読んでくれている皆さんのおかげでここまでモチベーションをキープしながらやってこれました。
これからも読んでくれる人がいる限り突き進んでいきたいと思います。
次回は新登場の朱里ちゃん、雪ちゃんがもうちょっとしっかりストーリーに絡んできます。




