22 圭の入学理由とブローチ
「師匠はどうしてこの学校に入ったのですか」
それは由美ちゃんからの唐突な質問だった。
俺はそれに答えるべく、思考を巡らせてみたものの由美ちゃんのようなこれといった動機が思い当たらなかった。
「俺か? 俺は……単純にバカだったから行く学校が無かっただけだ。ほら、この学校って偏差値はほとんどいらないから」
自分で言っていてもびっくりだ。本当にこれだけのことで俺はこんなデスゲームをやらされているのかと思うと今まで勉強してこなかったことが悔やまれる。まだ、由美ちゃんのように強くなりたいという理由があればもう少しやる気も出たのかもしれないが。
由美ちゃんも最初は驚いていたものの「そもそもここが戦う学校だって知ったことさえ入学してからだし」と付け加えると、
「ふふ、そんな純粋な理由でこの学校に入る人もいるんですね」
と笑いながら受け入れてくれた。
こうして話してみると意外と続くものだ。なんか由美ちゃんのいつもな見られない一面が見られた気がする。
「そろそろ出ますか師匠」
すでに30分くらいたっていたのだろうか。皿のモノはとうの昔に無くなっていた。
「だね」
そう同意すると、俺たちはファーストフード店を後にした。
それから俺たちはもう少しショッピングモールの中を散策していた。由美ちゃん達ての希望なら俺には拒む余地なんてどこにもない。
「師匠ー! 見てください。これすごくきれいじゃないですか」
一緒に隣を歩いていると思っていたのだが気づいたときには、アクセサリーショップの前で猫がしっぽを振るかの如く由美ちゃんが揺れていた。
その様子を俺より先に見つけたのか奥の方から店員さんが姿を現す。
もう何年もここで働いているのだろうか。そのメガネの先の鋭い視線なら百発百中でアクセサリーの本物と偽物を見分けられそうだ。
「お嬢ちゃんは何か欲しいのか」
だが、唐突な老人の登場に、ラスボスでも登場したかのように由美ちゃんはたじろいでいた。確かによく見ればVRゲームの世界に出てきた、『ぼったくり商人 ドワーフ』にそっくりだ。
だが、そんな彼女に代わって俺が注文する。
「その花形のやつをください」
「し、師匠⁉」
こちらを振り向く由美ちゃんは文字通り目を丸くしている。すげーかわいい。
「欲しかったんだろ?」
「いや、でもお金が無いって……」
よくそんな細かいところ覚えていたな。まぁファーストフード店にでも詰め込まれればしばらくは忘れないか?
「そんな心配しなくていいよ。これくらい」
「で、でも……」
そうこうしているうちにドワーフ――いや、おじいちゃんは店から再び姿を現した。手にはショーケースに入っていた物と同じ花形のブローチが。
それと引き換えに俺は財布から取りだしたお金を支払った。
「もう買っちゃったしもらっておけ」
「あ、ありがとう……ございます」
俺はその表情でお礼を言ってもらえればそれで十分だ。なんか「キッモー。圭君キッモー」って葵の煽る声が聞こえるんだけど。まるで呪いみたいに。すっげー背中寒い。
「師匠。見てください」
俺が謎の恐怖と戦っている合間に由美ちゃんはさっそく今買ったブローチを髪に付けてくれたようで、その花は小川に浮かぶ蓮の花のようにきれいに輝いていた。
「どう……ですか?」
透き通ったひとみにその不安げな目の煌めき。それが相まってまるで一つの絵画のような、美しさが目の前にはあった。
「すごく可愛い」
たったそれだけの言葉で、極度の緊張感からの解放された感覚に陥る。
だが、彼女は、「ありがとうございます」とハニカミながら駆け足で駅の方へと向かっていった。
あの笑顔を一生自分の心の中にしまっておきたいな~。
タイトルの入学理由とブローチの関係性は一切ありません(笑)
次回からいよいよ乱闘戦が始まります!




