112 圭vs葵 最終決戦
それ以上の言葉は無く、葵はただ剣だけを構えた。
如月を殺すにはもってこいのチャンス。もしかしたら二度と同じような好展開は起こらないかも知れない。
だが葵の期待に、洗脳されているとは言えここまで明確に俺に対峙し、俺に勝つことで一位になろうとする彼女を俺は無視できない。ここで無視をして彼女はどう思うだろうか。如月を倒すことで彼女の上がっているステータスが戻るかもしれない。その時に彼女の虚無感を「お前を救った」の一言で癒してあげられるだろうか。
――――俺には無理だ。
今の俺に葵を見捨てることなんて出来ない。
「行くぞ葵。本当の強さを改めて教えてやる」
俺はフレイムソードを構えた。如月ではなく葵に向けて。
「そう来なくっちゃ」
それ以降の俺たちの殴り合いの激しさと言ったら過去最大レベルかも知れない。それを見届けるものは俺と葵を除いて誰一人いなかったが金属音で不協和音を奏で、空に炎と氷の渦を巻きあげた。
それからどれだけ斬り合っただろうか。
「はぁはぁ」「ふぅ~」
お互い満身創痍という言葉がお似合いな立っているのがやっとの状態。それに加えて如月の氷も溶けかかっている。
「そろそろ決着を付けようぜ」
それはヒーロー気取りな一言とはわけが違う。本当に決めなければ体力も氷も限界なのだから。
「火力全開」
「フリッジ」
執念を乗せた各々の力が激しく主張し合い、ぶつかり合った。二つの台風が衝突したくらいの威力は災害そのもの。
「うりゃーーーーーーー」
「行けぇ~~~~~~~」
刹那、俺の目の前は真っ白になり、体では熱と冷気が交互に感じることが出来る。
『ピキピキ』
微かに、本当に微かに。もしかしたら気のせいでは無いかと思うくらい小さな音が炎と氷の轟音の中から。
だが、視界が開けるにつれその音の正体は次第と分かった。
葵の胸と首の間の部分がエメラルドのようなきれいな緑で煌めく。
「あれが葵を苦しみ続けていたものか」
「やめろー!」
如月の氷も時同じくして溶けたようで、その声はこちらまで届いてきた。
「ったく結局あいつの動きを止めた時間が終わっちまったじゃん」
まぁここであいつの野望が打ち砕かれる瞬間を見せてやるのも悪くは無いか。
俺はゆっくり葵に近づく。
彼女もこれ以上動くことが出来ないのか戦おうという気も逃げようという気も見られなかった。まるでオブジェクトのように虚ろな瞳でそこにたたずむのみ。
「葵。これが本物の一位の力だ。偽物には超えられないし超えさせない」
俺は煌めく一点に剣を突き刺す。
そして、ガラスが砕けるような音と共に緑の光を放つ物体は塵となって消え去った。
この章もそろそろ終わりに近づいております。




