110 背水の陣
何度も何度も互いの剣がぶつかり火花を散らす。が、決定的なダメージは無く、お互いの体力だけが削れていく。いや、削られてるのは俺だけか。葵の方は数分前と何一つ変わってない。呼吸さえ乱れてない。
「さすがの意地だよな」
「意地? そんなもんじゃないよ。欲だよ欲。私は圭君を倒して一番になる。そのためならなんだってしてやる」
休む間もなく次々と繰り出される連撃。躱すのが精いっぱいだし、これを繰り返しても葵の体力が減らないんじゃ勝機が無さすぎる。どっかで距離を取らなければ。
だが、フレームソードをこれだけ振って炎を飛ばしているのに一切葵にダメージが行かない。高速で連撃してくる中でも俺の炎を躱していると。
それが出来る常人を初めて見た。
「いや、今の葵を常人って呼ぶわけには行かないか」
俺も出せる限りの技で葵に応えた。幸いなことにフレイムソードの炎は魔法じゃない。肩と体力が持つ限り、振り続けることが出来る。
そうすることで再び彼女と距離を取った。作戦を立て直すには十分な距離。俺の炎は氷魔法で防がれる。剣の速さは明らかに負けている。
となれば自分の唯一の武器――――一撃の火力で。
「遅すぎだ」
だが、その声は葵の方ではなく、俺の背後から。暗く低い魔王のような声が響いた。
その声に反応するまでも無く俺の左肩がえぐれる。ついさっき響いた銃声が俺に向けたものだったのか。
もちろん咲の音とは異なっていた。さすがに彼女も死んだのちに洗脳されていたとかなったら俺は殺せなかっただろう。その点は良かった。その点は良かったのだがそれと等しいレベルの問題が……。
左肩からあふれる大量の赤黒い液。それは俺が散々見てきたし、流させたものとも異なる。
この時初めて知ったのだ。この学園で使われている武器で攻撃した時に流れる血は視覚的興奮を煽るためだけの疑似的なものだったという事を。
痛みも同じ。今まで剣や魔法でやられていた痛みはあくまで痛みっぽい何かに過ぎなかった。
俺が今感じている痛みこそ、本当の、本当に死ぬかもしれないという痛み。
『実弾を食らった時の痛み』
「ふん。さすがに実弾を使ったら気付いてしまったか。が、まぁいいだろう。お前がここで死ねば知り得た情報が漏れることも無い」
「やっぱりお前らなんか隠してたのか」
「だからどうしたって話だ。おい川上! お前殺すのが遅すぎだ。俺が出てこなきゃ男一人殺せないとはな。とんだ期待外れなんだが」
「申し訳ありません如月先生」
「まぁ構いません。ポンコツは鍛え直せばいいだけですから。とにもかくにもまずは風川を殺してからです」
「ハイ」
状況は最悪だ。俺は如月と葵の間に位置している。これを背水のなんちゃらって言うんだろうな。
最後の『背水のなんちゃら』は『排水のなんちゃら』って感じで圭君の知能低さ加減を出そうとしていたのですがなんか誤字ったと指摘が来そうなので止めました。
あ~後書きに書くことが無い汗




